研究課題/領域番号 |
17K15527
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
堺 陽子 愛知学院大学, 薬学部, 助教 (50723079)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヒトiPS細胞 / トランスポーター / 胆汁鬱滞肝障害 / in vitro肝障害評価系 |
研究実績の概要 |
医薬品開発における毒性評価は、必須項目であり、肝臓における医薬品候補化合物がどの程度の毒性を有するのかをより詳細に予測するために非常に重要である。そこで、申請者は、サンドイッチ培養法におけるヒトiPS細胞由来肝細胞を用いて、毒性試験への応用を可能かつ既存に類を認めないin vitro薬剤性胆汁うっ滞型肝障害試験法の確立を目的とした。 未分化コロニーの占める割合が70%のヒトiPS細胞に、activin A、dimethyl sulfoxide(DMSO)、dexamethasone(DEX)、hepatocyte growth factor(HGF)、oncostatin M(OSM)を順次添加し、さらに、低分子化合物であるvalproic acid(VPA)を用いることで、効率よく肝細胞への分化誘導を行った。その過程で、毛細胆管形成率を向上させるために、I型コラーゲンとGFR-マトリゲルの細胞外マトリックス(ECM)の組み合わせを用いたサンドイッチ培養法を取り入れた。その結果、明視野にて、胆管腔の形成が認められた。また、胆汁酸排泄トランスポーターであるmultidrug resistance-associated protein (MRP)2タンパク量は、Westan blot法にて、サンドイッチ培養後3日目から、ヒト初代肝細胞と同程度に発現していた。この時、取り込み・排泄トランスポーターであるOrganic Anion Transporting Polypeptide(OATP)1B3、bile salt export pump(BSEP)、MRP2、胆管マーカーとして知られるRadixin(RDX)は、免疫染色法にて、極性、機能の伴ったトランスポーターであることを確認した。したがって、胆汁うっ滞毒性評価系モデルの作製には、サンドイッチ培養後3日目が適切だと判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度行う研究に関しては、問題なく順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
トランスポーターによる取り込み・排泄能の指標として、蛍光基質であるTauro-nor-THCA-24-DBDや5 (and 6)-Carboxy-2’,7’-dichlorofluorescein diacetate (CDFDA)を用い、胆管腔を維持するために必要なタイトジャンクション機能を Ca2+/Mg2+存在の有無によって調節しながら薬物の取り込み・排泄量を評価するBiliary Excretion Index(BEI)法にて算出する。さらにそれぞれの阻害剤であるMK571やシクロスポリンA(CsA)などを加えることにより、定性評価を行う予定である。また、サンドイッチ培養したヒトiPS細胞由来肝細胞様細胞に、外部から胆汁酸と肝障害を引き起こす薬剤を同時に24時間暴露し、培地中の乳酸脱水素酵素(LDH)漏出にてin vitro薬剤性胆汁うっ滞型肝障害評価系の構築を行う予定である。この際、サンドイッチ培養したヒトiPS細胞由来肝細胞様細胞に外部から添加する胆汁酸濃度は、調製したヒト血清胆汁酸濃度とCsA添加群または非添加群における差から判断する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は 異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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