研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞から肝細胞への分化は、本研究室の25日間分化誘導プロトコール(PLoS One., 9; e104010, 2014)に沿って培養した。分化20日目に、I型コラーゲンをコートした培養皿に播種し、4時間後、グロースファクターリデュースト(GFR)マトリゲルで覆うサンドイッチ培養法を行った。 サンドイッチ培養後、明視野にて経日的に毛細胆管が形成した。mRNA発現量において、サンドイッチ培養後3日目において、NTCP、MRP2、BCRPはヒト初代肝細胞(48時間)とほぼ同等の発現量を示したが、BSEPやMDR1は低値であった。ウェスタンブロット法によるタンパク定量において、MRP2タンパク量はサンドイッチ培養によって、HPHs(0時間)とほぼ同等の発現量まで増加しまた、免疫染色では、細胞膜への局在も観察された。毛細胆管指標マーカーであるradixinも染色した。そして、MRP2、NTCP/BSEPの機能に関して、蛍光基質であるCDFDAやTauro-nor-THCA-24-DBDを用い評価したところ、インセルアナライザーによりCDFが毛細胆管に蓄積する様子が観察された。さらに、BSEPなどの阻害剤として知られているCyclosporin AによりTauro-nor-THCA-24-DBDの取り込みが阻害され、排泄トランスポーターだけでなく、NTCPにも機能が備わっていることも確認した。22化合物を100倍のヒト血清濃度胆汁酸(BAs)の存在下または非存在下で24時間同時暴露することによる細胞毒性評価を行った結果、7化合物において、胆汁酸存在下で細胞毒性を有意に引き起こした。これらの結果から、ヒトiPS細胞由来肝細胞のサンドイッチ培養により胆汁うっ滞型肝毒性が評価できる可能性が示唆された。
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