研究課題/領域番号 |
17K15528
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
上島 智 立命館大学, 薬学部, 助教 (70734771)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 直接トロンビン阻害薬 / 第Xa因子阻害薬 / 母集団解析 / ゲノム薬理学的解析 / PK/PD解析 / 個別化投与設計 |
研究実績の概要 |
近年、心原性脳塞栓症の予防目的で、ワルファリンと同等以上の安全性や有効性を示す直接作用型経口抗凝固薬 (DOACs) が使用されている。DOACsによる出血症状は高頻度で認められるが、DOACsの薬効を反映する明確な指標がないことが問題になっている。本研究では、直接トロンビン阻害薬ダビガトランの個別化投与設計法の実践に必要な情報を収集することを目指し、ダビガトランと血液凝固第Xa因子阻害薬の体内動態や薬効・出血症状の発現に及ぼす患者背景や薬物動態関連遺伝子多型の影響について比較検討を進めている。平成29年度においては、以下の知見を得た。
(1) DOACsの臨床薬物動態/薬力学/ゲノム薬理学的研究:文章にて同意を取得した患者を対象に、血液凝固第Xa因子阻害薬リバーロキサバンの血中トラフ濃度や第Xa因子阻害活性に及ぼす患者背景や薬物動態関連遺伝子多型の影響について検討した。その結果、患者の血清クレアチニン濃度とABCB1の遺伝子多型がリバーロキサバンの血中トラフ濃度/投与量の比 (C/D比) に影響を及ぼすことが明らかになった。また、リバーロキサバンの血中トラフ濃度は第Xa因子阻害活性と有意に相関することが明らかになった。現在、ダビガトランの血中トラフ濃度やトロンビン阻害活性に及ぼす患者背景や薬物動態関連遺伝子多型の影響について解析中である。
(2) ヒト組織由来のミクロソームを用いたダビガトランの代謝実験:複数のドナーでプールされた市販の肝臓由来ミクロソーム (HLM) を用いて、ダビガトランのグルクロン酸抱合反応特性を評価した。HLMにおけるダビガトランの固有クリアランスから肝クリアランスを算出した結果、ダビガトランの肝クリアランスは全身クリアランスの約20%になると推定され、ダビガトランの体内動態に対する肝代謝の寄与を無視できない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究においては、ダビガトランの臨床薬物動態/薬力学/ゲノム薬理学的解析についてはやや遅れている一方で、リバーロキサバンの臨床薬物動態/薬力学/ゲノム薬理学的解析については概ね順調に進んでおり、一定の研究成果を上げている。また、基礎研究においてはダビガトランの体内動態に対する肝代謝の寄与を算出できた。以上の進捗状況を勘案し、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は概ね順調に研究が進捗していることから、研究計画の変更を特に予定していない。研究最終年度である平成30年度では、臨床研究について引き続きデータを集積しつつ、ダビガトランやリバーロキサバンの母集団薬物動態/薬力学/ゲノム薬理学的解析を遂行することで、ダビガトランやリバーロキサバンの体内動態や薬効・出血症状に影響を与える変動要因の同定とその影響の大きさを定量的に明らかにしていく。また基礎研究においては、個体別HLMを用いてダビガトランのグルクロン酸抱合反応に関する個体間変動要因を明らかにする。 これら一連の研究成果を随時関連学会や学術雑誌で公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:平成29年度の直接経費のうち、約15%が未執行になったが、これは購入予定であった消耗品類を年度内に納品することが不可能であったことに起因する。
使用計画:平成29年度に購入できなかった消耗品類については研究最終年度である平成30年度に購入することから、予算執行上特に問題ないと考える。研究執行に必要な消耗品類は購入可能な状況にあることから、平成30年度分の研究予算については当初の計画を特に変更することなく執行する。
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