研究課題
近年、心原性脳塞栓症の予防目的で、ワルファリンと同等以上の安全性や有効性を示す直接作用型経口抗凝固薬 (DOACs) が使用されている。DOACsによる出血症状は高頻度で認められるが、DOACsの薬効を反映する明確な指標がないことが問題になっている。本研究では、直接トロンビン阻害薬ダビガトランの個別化投与設計法の実践に必要な情報を収集することを目指し、ダビガトランと血液凝固第Xa因子阻害薬の体内動態や薬効・出血症状の発現に及ぼす患者背景や薬物動態関連遺伝子多型の影響について比較検討を進めている。平成30年度においては、以下の知見を得た。(1) DOACsの臨床薬物動態/薬力学/ゲノム薬理学的研究:文章にて同意を取得した患者を対象に、ダビガトランの血中トラフ濃度やトロンビン阻害活性に及ぼす患者背景や薬物動態関連遺伝子多型の影響について検討した。その結果、患者のGFRの推算値がダビガトランの血中トラフ濃度/投与量の比 (C/D比) に影響を及ぼすが、検討した薬物動態関連遺伝子多型はいずれもC/D比に影響を及ぼさないことが明らかになった。また、ダビガトランの血中トラフ濃度はトロンビン阻害活性と良好に相関したが、いずれの臨床検査値や薬物動態関連遺伝子多型もトロンビン阻害活性に影響を及ぼさなかった。(2) ヒト組織由来のミクロソームを用いたダビガトランの代謝実験:市販の個体別肝臓由来ミクロソーム (HLM) を用いて、ダビガトランのグルクロン酸抱合反応特性を評価した。HLMにおけるダビガトランの肝固有クリアランスはUDP-グルクロン酸転移酵素 (UGT) 2B15の活性値と良好に相関したことから、ダビガトランの体内動態はUGT2B15の活性値に依存する可能性が示唆された。
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