研究課題/領域番号 |
17K15533
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
松尾 平 徳島文理大学, 薬学部, 講師 (90509267)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 続発性てんかん / サイトカイン / プロテオーム解析 / CAGE-seq |
研究実績の概要 |
ピロカルピン誘発重積けいれん(SE)モデルマウスを用いて海馬におけるタンパク量およびmRNAの発現量について時空間的・網羅的に解析を行った。このモデルマウスでは、重積けいれんの約7日後に自発けいれん発作を発現する。それまでのてんかん原性期のうちサイトカインなどの炎症性タンパク質の発現が上昇し始めるSE6時間後、さらに血液脳関門の破綻などが起こるSE2日後において海馬を取り出しmRNAを抽出し遺伝子発現解析をCAGE-seq法により解析した。その結果、SE6時間後において約400個、SE2日後では約1000個の遺伝子が4倍以上発現上昇していた。これらの結果は、これまでのプロテオーム解析の結果とも一致していた。これらの遺伝子発現変化情報から、様々な薬物投与時の遺伝子発現プロファイルが収納されているデータベース(LINCS)を使い、てんかん原性期に起こる遺伝子変化を抑制する候補薬を検索した。その結果、SE6時間後のデータを使用した場合は、15個、SE2日後のデータを使用した場合は35個の候補薬が見つかった。これらの薬物についてピロカルピン誘発SEモデルマウスで、脳障害後の自発けいれん発作を防ぐことができるか検討中である。またSE2日後に脳内へLy6C+Ly6C-細胞が浸潤していきていることがわかった。Ly6C+Ly6C-細胞は、急性炎症を抑制し組織の回復に寄与するとの報告があり、てんかん原性期の進行との関係についても今後検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子発現プロファイルの結果と大規模データベースを組み合わせることで、てんかん原性抑制薬の候補薬が見つかった。しかし、現在までのところ自発性けいれん発作を抑制する薬物は見つかっていない。てんかん原性期の脳内変化に関する情報は集まってきており、遺伝子発現プロファイル、タンパク質発現プロファイルから、脳内炎症を促進する経路と抑制する経路の両方が相互に作用していることがわかった。また脳内に浸潤してくる白血球のうちLy6C+Ly6C-細胞が最も多く、脳内炎症進行に深く関わっていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子発現プロファイルとデータベース解析を組み合わせて見つけたてんかん原性を抑制する可能性のある候補薬について、引き続きスクリーニングを行う。また自発性けいれん発作発生を抑制できなかった候補薬に関しては、候補薬を投与したSE2日後のマウス海馬からmRNAを抽出し、SE2日後の遺伝子発現プロファイルと比較する。それにより、発現抑制されているpathwayがあれば、そのpathwayは自発性けいれん発作発生に関わりが低いことがわかり、類似した効果のある候補薬については優先度を下げて実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ChIP-seq解析の委託が想定よりも安価に行うことができた。次年度使用額はスクリーニングする化合物の購入、実験動物購入代などの消耗品に使用する。またセルソーティング技術取得のための講習会参加費にも使用する。
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