研究課題/領域番号 |
17K15535
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金子 健一 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 研究員 (30776513)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 薬物トランスポーター / 慢性腎臓病 / PET / 薬物動態学的解析 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病では、薬物排泄能低下に腎臓以外の薬物トランスポーターの関与が推測されているが、具体的な臓器およびトランスポーターの特定には至っていない。慢性腎臓病患者は服用薬の種類と量が増える患者も稀ではなく、活性が変化するトランスポーター及び発現臓器の特定ならびに臓器連関の解明は医薬品適正使用をする上で急務の課題である。そこで、本研究では、我々が有用性を示してきたin vivoトランスポーター活性直接評価法であるPositron Emission Tomography (PET)により、慢性腎臓病モデルラットにおける評価を実施した。 まず、肝臓における評価を目的として、主に肝臓から排泄されるPETプローブである[18F]Pitavastatinを慢性腎臓病モデルおよび正常ラットに静脈内投与し、薬物動態を可視化することによって、慢性腎臓病モデルラットにおいて肝臓への取り込みが変化していることが評価できた。また、PETを用いることで、初めて、慢性腎臓病モデル作製、5、 8、 9、11週後に同一動物を用いた[18F]Pitavastatinの薬物動態評価をすることに成功した。 さらに、腎臓病のバイオマーカーである尿毒症物質5種類をLC/MS/MSにより同一分析法により同時に定量可能な濃度測定法を確立した。 PETにより、同一動物において病態が変化した場合の薬物動態評価が可能になると同時に、慢性腎臓病時に腎臓以外の臓器である肝排泄における薬物動態を可視化し、臓器連関を評価可能であることが示唆された。これらの結果は臨床応用に向けた基礎情報となると同時に医薬品適性使用に貢献するために非常に意義深いと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年度は慢性腎臓病モデル作製10-12週後に肝臓だけでなく、脳、小腸、腎臓についても複数のトランスポーターPETプローブを用いて評価を実施する予定であったが、以前開発した肝排泄型のPETプローブよりも特異的に肝臓から排泄される[18F]Pitavastatinの合成に成功したため、慢性腎臓病モデル作製、5、 8、 9、11週後に病態が変化した際の肝臓の評価を先行して実施した。 一方で、2018年度に実施予定であった慢性腎臓病のバイオマーカーである尿毒症物質の5化合物一斉分析法を確立することができた。さらに、2017年度のPET実験と並行して、real-time PCR測定用試料、ウェスタンブロティング用試料および腎機能マーカー(血清シスタチンC、尿中L-FABP、尿中アルブミン)濃度測定試料は採取済みである。 2017年度に実施しなかった脳、小腸、腎臓のトランスポーターPETプローブ評価に要する時間は、前倒しして確立した尿毒症物質の5化合物一斉分析法に費やした時間で補うことができると判断したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、慢性腎臓病モデルラットにおいてトランスポーターPETプローブを用いた脳、小腸、腎臓のトランスポーター活性評価を実施する。また、2017年度に[18F]PitavastatinのPET実験により得られたデータを用いて、より詳細に取り込み及び排泄に関わる素過程の定量評価を実施する。さらに、real-time PCRおよびウェスタンブロティングによるトランスポーター発現解析を実施する。これらの結果より、慢性腎臓病時のクリアランス変化の原因臓器およびトランスポーターならびに臓器連関を明らかにする。 また、慢性腎臓病バイオマーカー(血清シスタチンC、尿中L-FABP、尿中アルブミン、血漿中および臓器中尿毒症物質)の測定を実施する。トランスポーターPETプローブは高価かつ使用可能な施設が限れらるため、将来的に臨床での汎用性を考慮し、慢性腎臓病バイオーマーカー濃度とトランスポーター活性の連関を評価し、慢性腎臓病のトランスポーター活性マーカーとなる物質があるかを明らかにする。 以上の結果より慢性腎臓病モデルラットにおける基礎情報を収集し、臨床応用に向けた基盤構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本予算を用いて各種抗体、試薬、消耗品を購入する予定であったが、別予算での対応が可能であったため、残額約60万円が未使用額として発生した。 小額ということもあり、2018年度請求額と合わせて次年度使用計画に特段の変更はなく使用する。
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