研究課題
肝臓に発現するOATP1Bsは、高脂血症治療薬や経口血糖降下薬等のアニオン性薬物の肝取り込みを担っており、薬物間相互作用や個人差の観点で重要である。本研究では、肝OATP1Bsを主要なターゲットとし、プローブ薬を投与することなく、内因性基質の血漿中濃度推移を用いることで、医薬品および候補化合物の体内動態を予測する方法論を構築することを目的とした。内因性基質の生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを構築し、定量的な予測を試みた。令和1年度までに、OATP1Bsの内在性基質として感受性・特異性が高いコプロポルフィリンI(CP-I)のPBPKモデルを構築し、重点的に解析した。平成28年度に実施した臨床DDI試験「リファンピシンによるスタチンおよび内在性基質の体内動態への濃度依存的影響」の血漿中濃度測定により得られたデータを用いて、CP-Iに対する影響をもとにin vivo阻害定数(in vivo Ki)を最適化計算し、in vitro Kiの比を考慮した上でスタチンに適用することで、相互作用を定量的に説明した。in vitro Kiの基質依存性を考慮しなかった場合に比べて、考慮した場合は濃度推移、AUCとも良好な予測結果となった。さらに、OATP1B1およびOATP1B3の寄与率を求めるin vitro実験(relative activity factor method)を行い、OATP1B1が主要な役割を担うことを明らかにした。これは、OATP1B1をコードするSLCO1B1の遺伝子多型により、CP-Iの血中濃度が顕著に上がることを示した我々の研究と矛盾しなかった。さらに、胆汁排泄過程におけるMRP2の寄与とリファンピシンによる阻害作用の解析、MRP2欠損ラット(EHBR)を用いたCP-IおよびコプロポルフィリンIII(CP-III)の体内動態の比較を実施し、論文化を進めている。
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Drug Metab Pharmacokinet.
巻: 34 ページ: 78-86
10.1016/j.dmpk.2018.09.003