研究課題/領域番号 |
17K15537
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
柴田 寛子 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 室長 (60462769)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | バイオ医薬品 / 凝集体 / 補体活性化 |
研究実績の概要 |
抗体などバイオ医薬品に含まれるタンパク質の「凝集体」は,免疫細胞の活性化や補体活性化を介して免疫原性など有害事象を引き起こすリスク因子の一つと考えられている.しかし凝集体の特性と安全性との詳細な連関はいまだ明らかになっていない.本研究では,特に補体活性化に着目し,凝集体の物理化学的な特性との関係を明らかにすることを目的としている.これまでに,凝集体の形状や電荷などの特性が補体活性化に与える影響は明らかになっておらず,本研究の成果は,バイオ医薬品に共通した,適切な品質管理や安全性確保のための方策を講じるのに,有用な知見となることが期待される. 本研究の特色は,凝集体の形状や電荷など物理化学的な特性に着目した点であり,研究を遂行するには,様々な特性の凝集体を作製する必要がある.モデルタンパク質製剤として静注用免疫グロブリン製剤を用い,種々ストレス条件下において形成される凝集体の形状と粒子数をフローイメージング法により観察した.加熱及び撹拌条件を詳細に検討することで,形状や透明度の異なる凝集体を調製できることが判明した.調製した試料について,冷蔵および凍結保存後の変化を観察し,安定性の観点から,本研究の実験に使用するのに問題の無いことを確認した. 今後は,可溶性タンパク質から凝集体を分画する方法を検討すると共に,凝集体による補体活性化を評価するための方法を確立する.確立した方法で,今回調製した凝集体による補体活性化の程度や活性化経路について解析を試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデルタンパク質製剤である静注用免疫グロブリン製剤に対し,種々物理的なストレスを加え,形成された凝集体の形状と粒子数を観察したところ,加熱及び撹拌の条件を詳細に検討することで,形状や透明度の異なる凝集体が得られることが分かった.本研究を実施する上で,目的とする特性を持った凝集体試料を安定して作製できる方法の確立が非常に重要であったため,試料の安定性などを評価したことから,凝集体の分離方法や補体活性化の評価方法の検討がやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,凝集体試料から可溶性タンパク質を除くための分離方法を検討する.特性の異なる凝集体を作製できたので,形状など特性によって凝集体を分離する必要は無いと考える.また補体活性化の評価方法については,溶血性の他,C3a,C5a, 膜侵襲複合体の測定系について,方法を確立する.
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次年度使用額が生じた理由 |
凝集体の調製と安定性の評価に時間を要したため,当初の計画よりもやや遅れている.また,モデルタンパク質製剤として選択した免疫グロブリン製剤の追加購入が不要になったため,次年度使用額が生じた.次年度は,他のモデルタンパク質製剤を購入する他,補体活性化を測定するための物品を購入する.
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