リンパ管の形成メカニズム解明はがん進展の病態解明と治療戦略の確立に必須であるが、多くのことが未だ不明である。CD73は細胞外AMPをアデノシンに変換する酵素でリンパ管内皮で強く発現しているが、リンパ管での役割はほとんどわかっていない。リンパ管内皮細胞と線維芽細胞を三次元積層培養し構築した三次元リンパ管培養組織は管腔構造を伴うリンパ管ネットワークを構築するため、これを用いて解析を行った。 平成29年度は三次元リンパ管培養組織のライブイメージング手法を構築し、(1)リンパ管内皮細胞が平面的に1次管腔ネットワークを形成し、そこから出芽・伸長・移動・吻合を繰り返して三次元的な2次管腔ネットワークを形成することが明らかになった。(2)三次元リンパ管培養組織でのCD73ノックダウン(KD)はリンパ管網形態に影響しなかったため、リンパ管内皮細胞チューブ形成アッセイを行ったが、(3)CD73KDはリンパ管網形成に影響せず、(4)AMPCP(CD73阻害剤)投与もリンパ管網形成に影響しなかった。 平成30年度、(5)三次元リンパ管培養組織へのNECA(アデノシンレセプターアゴニスト)またはAMPCP投与によりリンパ管ネットワーク形成が亢進した。(6)CD73KDにより1次管腔ネットワーク形成は遅延したが、2次管腔ネットワーク形成は抑制されなかった。 平成31年度、(7)1次管腔ネットワークでは平板状に展開していたリンパ管内皮細胞群が形態変化して扁平なリンパ管網を構築するのに対し、2次管腔ネットワークでは突出したリンパ管内皮細胞中の細胞内小胞がリンパ管内腔へ変化していた。 以上より、三次元リンパ管培養組織におけるリンパ管の形態形成運動が明らかになり、CD73のリンパ管形態形成への関与が示唆された。
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