研究課題
脂肪酸の摂取は脳の発達に非常に重要であり、その摂取障害は統合失調症などの精神疾患を引き起こす。しかし、その脳内分子基盤については不明である。本研究では、脳アストロサイトに強く発現し、その細胞内脂質動態を制御する脳型脂肪酸結合蛋白質 (Fatty acid-binding protein 7; FABP7)に着目し、その機能発現メカニズムの解明を目指している。これまでに申請者らは、FABP7が細胞外刺激応答において非常に重要な役割を果たす脂質ラフト(カベオラ)の機能制御に関与すること、脂質ラフトの骨格形成に重要な役割を果たすcaveolin-1の発現を調節すること(Kagawa et al. Glia. 2015)を見出した。本申請ではFABP7がcaveolin-1の発現を如何に調節するかに焦点を当てた解析を試みた。その結果、FABP7の発現が増加すると①caveolin-1 mRNAの発現が増加、②DNAのメチル化が減少、③ヒストンのアセチル化が増加する、④ヒストンアセチル基転移酵素の基質となるAcetyl CoA量が増加する、ことを見出した。さらに、FABP7蛋白質のモチーフを基盤とした解析により、FABP7は脂肪酸と結合している時だけATP-citrate synthase(ACLY; 核内Acetyl CoA生成に非常に重要な酵素)と相互作用を持ち、その酵素活性制御に関与することを明らかにした。これらの結果より、細胞内脂質環境の変化が新たな蛋白質相互作用を生み出し、エピゲノム変化に影響を及ぼすことが示唆される。 さらに詳細な解析を加えることで、FABP7が関与する精神疾患病態や癌バイオロジーの解明及びそれら疾患の治療創薬の開発に大きく貢献できると考える。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Advances in Biological Regulation
巻: 71 ページ: 206~218
doi: 10.1016/j.jbior.2018.09.006
Molecular Neurobiology
巻: - ページ: -
doi: 10.1007/s12035-019-1489-2
Neuroscience
巻: 55 ページ: 9016~9028
doi: 10.1007/s12035-018-1033-9
The Journal of Neuroscience
巻: 38 ページ: 10411~10423
doi: 10.1523/JNEUROSCI.1285-18.2018
http://www.organ-anatomy.med.tohoku.ac.jp/