研究課題/領域番号 |
17K15540
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
串田 良祐 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10707003)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Muse細胞 / 多能性幹細胞 / 遊走 / microRNA |
研究実績の概要 |
生体組織に存在する腫瘍性を持たない多能性幹細胞であるMuse細胞は直接血管内や局所に投与するだけで、傷害組織へ遊走・集積し、組織に応じた細胞に自発的に分化して組織修復を行う。Muse細胞は傷害組織から放出される遊走因子であるsphingosine 1-phosphate (S1P)を受容することで傷害組織特異的に遊走することが明らかにされているが、Muse細胞の遊走制御機構については十分に明らかにされていない。本年度は、Muse細胞の傷害組織への遊走の分子メカニズムを明らかにするために、Muse細胞の遊走を制御するmicroRNAの探索を試みた。 前年度までに四塩化炭素投与による肝障害モデルマウスの血清を用いたボイデンチャンバーによる遊走試験において、骨髄間葉系幹細胞由来Muse細胞を肝障害モデルマウスの血清に曝露すると、曝露後24時間までにMuse細胞以外の間葉系幹細胞(非Muse細胞)に比べ高い遊走能を示した。次に、接着状態または浮遊状態のMuse細胞を肝障害モデルマウスの血清に曝露し、12時間後のmicroRNAの発現をマイクロアレイにて網羅的に解析した。その結果、肝障害モデルマウス血清曝露したMuse細胞で多くのmicroRNAの発現が変動することが明らかになった。 本年度は前年度に引き続き、マイクロアレイデータを解析するとともに、変動の見られたmicroRNAについて、quantitative RT-PCRで経時的な変化を解析し、その動態を明らかにした。また、異なる細胞ソースでも同様の現象が起こるのか確認するために臍帯組織由来Muse細胞でも遊走試験を行い、同様の挙動を示すことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は肝障害モデルマウスの血清曝露によるMuse細胞内のmicroRNAの経時的な変動をより詳細に解析することができた。しかし、前年度に接着状態と浮遊状態におけるmicroRNAの発現変動に大きな違いがあることも見出されたことから、遊走に関わるmicroRNAの選定とその経時的な動態の解析に時間を要した。現在、選定したmicroRNAをMuse細胞に導入し、特性解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は選定したmicroRNAをMuse細胞に導入またはinhibitorにより阻害し、遊走関連因子への影響を遺伝子発現解析やボイデンチャンバーを用いた遊走試験における遊走効率を評価する。特に遊走効率を亢進させる因子が同定された場合、その因子を導入したMuse細胞を肝障害モデルマウスに移植し、生体内での遊走効率を評価する。同様の効果が異なる細胞ソースのMuse細胞でも見られるかも同時に検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はマイクロアレイ解析の結果に基づき、傷害血清曝露したMuse細胞のmicroRNAの発現に大きな変動があるmicroRNAの発現について、quantitative RT-PCRにて経時的な変化を解析を行ったが、一部解析が終わらなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度は、引き続きquatitative RT-PCRによる解析を行い、その後、候補となるmicroRNAをMuse細胞に導入し、その特性について解析を行う予定である。
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