研究課題/領域番号 |
17K15542
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
備前 典久 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40751053)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ミエリン / 脱髄 / オリゴデンドロサイト / 軸索変性 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
オリゴデンドロサイト(OL)は中枢神経系において髄鞘を形成する細胞であり、円滑な神経伝達を可能にするために不可欠な細胞である。OL分化を制御する機構としてRNAスプライシングやmiRNA生成などのRNA代謝が注目されているが、それらを制御する分子の作用機序については不明な点が多い。本研究はOL発生に必須の分子として新規に同定したRNAヘリカーゼObp2 (Olig2-binding protein 2)の、OL分化およびミエリン形成過程における転写-RNA代謝機構の解明を目的としている。今年度は、成熟OL特異的 Obp2欠損マウス(MBP-Cre; Obp2 cKOマウス)の組織学的解析を主に行い、以下の研究成果を得た。このマウスは生後深刻な成長障害とふらつきなどの運動障害を呈し、7週齢前後で死亡した。Obp2欠損によるミエリン形成への影響を免疫組織化学およびin situ hybridizationで解析したところ、6週齢マウスの大脳皮質、脳幹、脊髄において、成熟OLマーカーであるCC-1やミエリン関連タンパクであるPLPおよびMBPの発現が減少していた。一方、OL前駆細胞マーカーであるPDGFRα陽性細胞の数に有意な差は認められなかった。また、脳や脊髄の広範囲で活性化アストロサイトや活性化ミクログリアの存在が認められた。次に、電子顕微鏡を用いてミエリン構造異常について解析したところ、脊髄側索および脳幹網様体の軸索の一部で、ミエリンの低形成と軸索の変性が認められた。以上の結果は、Obp2がOLの最終分化に重要な役割を担っていることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織学的解析から、オリゴデンドロサイト最終分化においてObp2が重要な役割を持つことが示された。また、行動解析に用いるMBP-Creマウスの戻し交配も順調に進んでいる。一方組織学的な表現型が現れる時期を特定できたが、トランスクリプトーム解析等を行うまでには至らなかった。しかし、次年度に行う予定であった電子顕微鏡を用いた解析を前倒しで行うことができ、成果も得られたことから、全体の進捗状況として概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、別のOL系譜特異的Obp2欠損マウス(Cnp-Cre; Obp2 cKOマウス)を作製し、OL分化からミエリン形成へのプロセスにおけるObp2の役割を詳しく検証すると共に、ミエリン形成異常の原因を組織学的・分子生物学的手法用いて明らかにしていく。さらに、その背景となる分子動態を調べるために、トランスクリプトーム解析等を行う。また、MBP-Cre; DDX20 ckOマウスの解析中に末梢神経障害を疑う所見も認められたため、シュワン細胞の表現型についても解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Obp2欠損マウスにおいてミエリン形成の破綻が生じる時期の特定に時間を要してしまい、トランスクリプトーム解析が今年度中に行うことができなかったため。来年度にRNA-seqを行う予定である。また、免疫組織化学に使用できる抗体を作製する。
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