研究課題
網膜視細胞は繊毛が発達した構造である外節において光を受容し電気シグナルへと変換する。視細胞は周囲の光強度に応じて光受容感度を調節しており、これにより私たちは適切な視覚を得ることが可能となる。この視細胞の明暗順応に光情報伝達に関与する蛋白質の細胞体と外節間の局在変化が関与することが知られているが、その制御機構は不明な点が多い。私たちはCullin-Ring型ユビキチンE3ライゲースKlhl18が網膜視細胞において高発現していることを見出した。Klhl18欠損マウスを作製し表現型解析を行うと、このマウスは網膜の細胞構成や視細胞の外節やシナプス形成に関して明らかな異常は示さなかった。しかし、網膜電図により視細胞の光応答を観察すると、Klhl18欠損マウスは明所での光応答に影響がなかったが、暗所での光応答が有意に低下していた。桿体視細胞の光受容体蛋白質ロドプシンは三量体G蛋白質トランスデューシンへとそのシグナルを伝える。暗所下では、トランスデューシンは光感度上昇のため細胞体から外節へと移動し集積する。Klhl18欠損マウスでは暗順応下でトランスデューシンが細胞体において局在しており、「明順応状態」化していた。また、私たちはKlhl18がトランスデューシンの輸送に関与することが知られる蛋白質Unc119と結合し、ユビキチン化、分解すること、Klhl18欠損マウスの視細胞ではUnc119の蛋白質発現が上昇することを見出した。また、Unc119を網膜視細胞に過剰発現するとKlhl18欠損網膜と同様のトランスデューシンの局在異常を示した。さらに、Unc119の視細胞における発現量は明暗環境によって変化し、Klhl18に依存していた。以上の結果より、Klhl18はUnc119のユビキチン化、分解を介して明暗順応におけるトランスデューシンの細胞内輸送を制御することが示唆された。
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