研究実績の概要 |
本研究の目的はラットの肺静脈心筋における過分極活性型Cl-電流の心房細動への関与を多角的に検討することである.心房細動という不整脈は肺静脈から発生することが知られているが,肺静脈から不整脈が発生する分子機構は不明な点が多い.以前,申請者はラットの肺静脈で不整脈を促進するようなCl-電流を記録していた(Okamoto,JMCC,2012).本研究では先ず、このCl-電流の分子実態を同定するため,既存のCl-チャネルを鋳型とした分子クローニングを試みた.Cl-チャネルのメインサブユニットがClC-2であるとわかった.さらに,ClC-2に結合するタンパクをIP-MS法で探索した結果,構造性ヒートショック蛋白であるHSPA8 (HSC70)をClC-2の調節タンパクとして新規に同定した(Okamoto, JBC, 2019).心房・肺静脈組織において局所的に発現の高いアデニリル酸酵素を同定し,これが不整脈発生に寄与する機序をCa2+イメージングで観察した(論文投稿中).学外共同研究により,ラット肺静脈において持続性不整脈(自動能)が発生する現象を,コンピューター上で再現した(Umehara, IJMS, 2019).ラット以外の肺静脈で過分極活性化電流を研究したところ,ラットとは異なる電気生理学的性質を示していた(Takagi, JPSC, 2020).現在は,ラット不整脈モデルを作製して,種々の薬剤の効果を検証しながら,学外共同研究でヒトサンプルを用いた研究を計画中である.研究成果を新規の心房細動治療薬開拓の橋渡し研究へと展開していきたい.
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