睡眠時ブラキシズム(SB)は、覚醒反応に関連した、GrindingやClenchingを特徴とする反復性の咀嚼筋運動と定義され、その力学的作用は顎口腔系へ破壊的に作 用し、歯科治療の予後を大きく左右し得るが、発症メカニズムは不明な点が多い。また、ブラキシズムは、ストレスや薬物、遺伝的要因など、さまざまな因子が 複合的に関与する多因子疾患であり、マウスピース等の対症療法が第一選択となっているのが現状である。従って、より良い歯科診療ならびに口腔環境の向上の ためにはブラキシズムの治療法の開発は必須であり、睡眠時ブラキシズムの発生メカニズムを解明することは歯科医学分野にとって急務である。睡眠時ブラキシ ズムのリスクインジケーターとして、先天的要因である遺伝子多型、後天的要因であるストレス、薬物等が報告されている。薬物においては、SSRI: セロトニン 再取り込み阻害薬、SNRI: セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、合成麻薬などとの関連が報告されており、特にSSRIは、抗うつ薬の一種で、シナプ ス間隙にあるセロトニン量を増やすことで薬効を発揮する一方、ブラキシズムを誘発する可能性が報告されている。これまで、ヒトのSB増悪が報告された薬物 (SSRI:シタロプラム)を動物モデル(マウス)に慢性的に投与して咬筋筋活動を24時間記録し、Non-REM睡眠中の高い筋活動を示す時間が有意に増加すること を示した。これらSSRI投与による咬筋活動への影響を、生理化学的に検討するため、ELISAを用い、SSRIを慢性的に投与したマウ スの血中セロトニン濃度の測定を行ってきた。当該年度は、得られた実験結果に対して解析を行った。
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