研究課題/領域番号 |
17K15560
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
蔡 文倩 横浜市立大学, 医学研究科, 特任助教 (00751512)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Epac / 不整脈 / 心不全 |
研究実績の概要 |
交感神経系の制御は心不全,不整脈治療において極めて重要な位置を占めており,現在主に用いられているのはβ遮断薬である.しかしβ-AR遮断薬はβ-ARを介するシグナル全体を抑制してしまうため,基本的な心機能維持まで抑制し,心不全を逆に増悪させてしまう副作用がしばしば大きな問題となる.我々はこのカテコラミンの作用のうち,有害な作用をEpac1(Exchange Protein directly Activated by cAMP)が選択的に仲介していることを明らかにした.本研究の目的はこれまでの研究成果を元に,Epac1を標的とすることで,心機能抑制などの副作用の少ない,既存の薬剤より安全で有用な心不全,不整脈治療の確立を行うことである. 先行研究でEpac1欠損マウスでは,経食道ペーシングにより誘発される心房細動の持続時間が有意に短いことを明らかにした.これを踏まえ,Epac1選択的阻害剤(CE3F4)をマウスに投与し,経食道ペーシングにより誘発される心房細動の持続時間を評価する.CE3F4を投与群では誘発した心房細動の持続時間が非投与群より有意に短縮していた。 また心房細動発症抑制効果のメカニズムを解明するため,マウス心房から抽出した心筋細胞を用いて,Ca2+動態を評価した.既に我々は検討を開始しており,Epac1阻害剤であるCE3F4がノルエピネフリンによる筋小胞体からCa2+リークを抑制する所見を得ている.さらに,Epac1欠損マウス心房から培養した細胞は,野生型マウスと比べ,ノルエピネフリンによるCa2+リークが軽微であった.このことから,Epac阻害剤が不整脈治療薬として有用であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Calsequestrin 欠損マウスにおける,交感神経系活性化により誘発される心室性不整脈モデルを用いて,Epac1選択的阻害剤の心室性不整脈治療における有用性を評価した.Epac1選択的阻害剤は心室性不整脈と筋小胞体からCa2+リークを抑制することを確認した.更に薬剤投与マウスの心室組織における不整脈発症に関わる分子(リアノジン受容体,イオンチャンネルなど)の発現量の変化をウエスタンブロッティングなどで評価している.
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今後の研究の推進方策 |
野生型マウスを用いて,胸部大動脈縮窄術による圧負荷モデル,慢性カテコラミン負荷,冠動脈結紮による心筋梗塞モデルなどを作製し,心機能の変化を,左室内カテーテル検査と心エコー検査により評価する.各種Epac 阻害剤投与群,非投与群を比較検討することにより,心不全治療におけEpac 阻害剤の有用性を評価する.更に上記の各種心不全モデルマウス由来の心臓切片標本でアポトーシスの程度(TUNEL アッセイ),線維化の程度(マッソントリクローム染色など)を評価する.また,心筋アポトーシス,心臓線維化,活性酸素制御などに関わる分子(4-HNE)の発現量や活性をウエスタンブロッティングなどを用いて評価する.
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