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2017 年度 実施状況報告書

メカノトランスダクションを介した肝星細胞活性化メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15561
研究機関大阪市立大学

研究代表者

宇留島 隼人  大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (90755745)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードメカノトランスダクション
研究実績の概要

肝星細胞は活性化するとコラーゲンなどの細胞外基質を産生し創傷治癒に働く。しかし、慢性肝炎時の持続的肝星細胞活性化はコラーゲンの過剰蓄積を引き起こし肝線維化の要因となる。肝線維化の終末像である肝硬変時にはディッセ腔に正常時の10倍以上の細胞外マトリックスが蓄積する。また肝硬変に伴う低ナトリウム血症によって類洞およびディッセ腔は低浸透圧環境となる。従って周囲環境の硬度や浸透圧の変化による機械的刺激(メカノトランスダクション)が肝星細胞に加わり、この機械的刺激が肝星細胞活性化の一役を担っていることが考えられる。当研究は肝星細胞のメカノトランスダクションを介した活性化研究を行っている。
本年度は肝星細胞を低浸透圧環境で培養しアポトーシス誘導モデルを用いて低浸透圧環境の肝星細胞アポトーシスに対する影響を解析した。低浸透圧によって細胞伸展が生じ、細胞伸展受容体であるTRPV2が活性化した。TRPV2活性化によって抗アポトーシス分子であるBcl-2の発現が増強しアポトーシスを抑制することが明らかとなった。これらの作用は肝星細胞だけでなく肝がん細胞株でも観察された。肝硬変は肝がんの重要なリスクファクターであり、肝硬変を伴う肝がん患者の血清ナトリウム値は低下することがわかっている。
これらのことから肝硬変時の低浸透圧環境は抗アポトーシス効果を介して肝星細胞持続的活性化による更なる肝線維化進展、および肝がん細胞の増殖に寄与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の予定では肝星細胞を活性化させるメカノトランスダクションとその受容体の同定が今年度の計画であった。我々はヒト肝硬変時の病態に則したメカノトランスダクションを探索した結果、低浸透圧環境がTRPV2を介して抗アポトーシス効果を発揮することを明らかにした。従って計画はおおむね順調に伸展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

メカノトランスダクションによる肝星細胞活性化だけでなく肝がん細胞株のアポトーシス抑制効果も確認できた。次年度ではTRPV2活性化とBcl-2発現増強をつなぐメカニズムの解析をすすめる予定である。また、TRPV2活性化抑制効果を有する低分子化合物を探索し、マウス線維化モデル、マウス発がんモデル、あるいはヒトがん細胞マウス移植モデルを用いてTRPV2活性化抑制分子が肝線維化進展あるいは発がん、がん細胞増殖を抑制するかどうかを確認する。

次年度使用額が生じた理由

細胞伸展受容体TRPV2関連タンパクをMS解析によって同定する予定であったが、タンパク抽出に改良の余地があり実施しなかった。このため次年度使用額が生じた。平成30年度にこの解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] 低浸透圧環境下における肝がん細胞アポトーシス抑制のメカニズム解析2018

    • 著者名/発表者名
      宇留島隼人、松原勤、河田則文、池田一雄
    • 学会等名
      第7回 Kansai Liver Club
  • [学会発表] 低浸透圧環境は活性化肝星細胞や肝がん細胞のアポトーシスを抑制する2017

    • 著者名/発表者名
      宇留島隼人、松原勤、小田桐直志、池田一雄
    • 学会等名
      第31回肝類洞壁細胞研究会

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公開日: 2018-12-17  

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