研究課題
バゾプレッシン(AVP)ニューロンを特異的に活性化させる手法は少なく、AVPニューロンの行動における役割の理解が十分に進んでいない。我々は、AVP遺伝子に薬剤興奮性受容体であるhM3Dq遺伝子およびmCherry遺伝子を挿入した融合遺伝子を用いて、AVP-hM3Dq-mCherryトランスジェニックラットを作出した。このラットにhM3Dqのアゴニストであるclozapine-N-oxide(CNO, 1mg/kg)を腹腔内投与し、90分後に灌流固定を行い、抗AVP抗体、抗オキシトシン抗体、および抗Fosタンパク抗体を用いた免疫組織化学的染色法を行った。その結果、mCherry陽性ニューロンはAVP免疫染色性陽性ニューロンと一致し、視交叉上核、視索上核および室傍核大細胞性mCherry陽性ニューロンの約90%にFosタンパク発現を認めた。一方で、mCherry陽性ニューロンはオキシトシン免疫染色陽性ニューロンとは一致しなかった。これらはmCherry陽性ニューロンがAVPニューロンに特異的であり、hM3Dqが機能的であることを示唆する。また、CNO腹腔内投与10分、30分、60分、120分後に、有意な血漿AVP濃度の上昇を認めた。暗期直前にCNOを腹腔内投与したところ、活動量や体温のサーカディアンリズムが顕著に乱れ、摂食量、飲水量、および尿量が有意に低下することを明らかにした。成熟雄性Wistar系ラットにCNOを投与しても、血漿AVP濃度は増加せず、摂食量、飲水量、および尿量に変化を認めなかった。以上より、内因性AVPニューロンの活性化はサーカディアンリズムの乱れを引き起こすこと、また、摂食量、飲水量、および尿量を低下させることを明らかにした。このトランスジェニックラットは、AVPの生理機能を研究する上で有用なモデル動物となることが期待される。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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