本年度は、前年度明らかにしたヒトiPS細胞由来ニューロンの培養条件を用いて、代表的な痙攣陽性化合物の用量依存的な自発活動データを取得し、解析法を検討とした。発火数や同期バースト発火の特性などの一般的な解析パラメータに加え、株価の変動などの解析に使用されている非線形時系列解析法を神経ネットワーク活動の発火タイミングに応用しし、自発活動データを定量化した。発火数の増減では検出することのできない、薬剤応答の差異を検出できることがわかった。発火タイミングに着目した定量化指標を従来の解析パラメータに追加することで、薬効評価の精度が向上する可能が示唆された。次に、薬剤応答の解析で最も重要となる同期バースト発火について、同期バースト発火の個数と長さを正確に検出できる人工知能を用いた検出法を検討した。発火密度をAIに学習させるアルゴリズムを構築し、学習させたAIを用いて未学習データの同期バースト発火を検出させたところ、90%以上の確率で同期バースト発火を検出できた。AIにより検出した結果が従来法により検出した教師データよりも正確である可能性がある為、評価手法の検討も必要であることがわかった。改善する必要はあるがAIを用いた同期バースト発火検出法や上記の発火タイミングの規則性を定量化する解析法は、得られたビックデータの迅速な解析および薬効評価精度の向上につながるものと考えられる。
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