今年度は、器質的な病変を有する冠動脈における可溶性グアニル酸シクラーゼ (sGC) ヘム鉄の酸化還元状態についてさらなる検討を重ねた。正常食 (N 群) あるいは 1% の高コレステロール食を 4 週間 (S-HC 群) あるいは 12 週間 (L-HC 群) 給餌したウサギから冠動脈を単離し、sGC β1 抗体による免疫染色標本を作成・観察したところ、平滑筋における sGC β1 発現は N 群と S-HC 群の間には大きな差は認められなかった。一方、L-HC 群では平滑筋の sGC β1 発現はわずかに減少する傾向がみられ、その反面、粥腫に強い発現を認めた。次に、一酸化窒素 (NO) 供与剤および sGC 活性化剤を添加した際の cGMP 産生量を測定したところ、NO 供与剤による cGMP 産生量は N 群と S-HC 群間で差は認められなかったが、L-HC 群ではやや減少していた。また、sGC 活性化剤による cGMP 産生量は N 群と比較して S-HC 群や L-HC 群では増加傾向にあった。以上の結果をこれまでの成果と合わせると、冠動脈平滑筋における sGC ヘム鉄の酸化還元状態は内腔狭窄が生じる以前に破綻することが示唆される。なお、器質的な病変を有する冠動脈の sGC 刺激に対する応答性の変化には、sGC ヘム鉄の酸化還元状態だけでなく分布の変化も大きく影響していると考えられる。
|