研究課題/領域番号 |
17K15580
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
和氣 秀徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 講師 (60570520)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HRG / 敗血症 / 免疫血栓形成 |
研究実績の概要 |
In vivo実験を行う為には、大量のHistidine-rich glycoprotein (HRG) が必要となる為、まず、ヒト血漿からHRGを精製し、高純度のHRGタンパク質を準備した。次にin vivoイメージングを行う上で必要となるモデルの作成を行った。具体的には、Cecal ligation and puncture (CLP) 腹膜炎敗血症モデルマウスの作成条件の検討とHRG RNAiを用いたHRGノックダウンマウスの作成を行った。これらマウスの内、CLPモデルマウスを用いてin vivoイメージングを行い、CLPマウス腸間膜血管に多数の好中球が接着し、その好中球の上に血小板が集積している像 (免疫血栓) を確認することが出来た。この結果は、敗血症になると血管内に多数の免疫血栓が形成されることを示している。次に、血管内皮上の接着分子や炎症関連因子を検出する為に、まず蛍光標識レクチンを用いて血管内皮染色を行った。しかしながら、レクチンでは血管内皮のみならず好中球も染色され、血管内皮特異的な染色が行えないことが明らかになった。また、in vivoイメージング実験だけでなく、免疫血栓形成機構を解明する為にin vitroの実験も行った。この免疫血栓形成には好中球や血小板だけでなく赤血球が重要な働きをする可能性がある為、赤血球に対するHRGの作用を調べた。敗血症等の炎症病態においては血小板より亜鉛が放出される。そこで、赤血球に亜鉛を処理すると、赤血球凝集と赤血球-血管内皮接着が起こるが、HRGはこれら反応を阻害することが明らかとなった。さらに、免疫血栓形成には活性酸素も寄与していることが知られている為、HRGの活性酸素への作用を調べたところ、HRGはヒドロキシラジカルの産生を阻害すると共に、ダイレクトな抗酸化能も有していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vivo イメージングに用いる血漿HRG精製、マウスCLP敗血症モデル作成、HRGノックダウンマウス作成を完了し、CLPマウス腸間膜血管循環動態in vivo イメージングを行った。その結果CLPマウスの腸間膜血管に免疫血栓が多数形成されていることが明らかとなった。また、血管内皮や接着分子の染色も行った。しかしながら、血管内皮の特異的な染色ができず、現在、検出抗体などの選定を行っている。さらに、免疫血栓形成に重要と考えられる赤血球と活性酸素に対するHRGの効果についても検証した所、HRGは赤血球の凝集や血管内皮への接着を抑制し、活性酸素の産生を阻害・中和することが明らかとなった。以上の結果より、当初の予定通りイメージングを行う為の準備は完了し、追加してin vitroの実験を行ったが、イメージングの手法に関してはもう少し検証する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoイメージングによる血管内皮特異的検出法を早期に確立し、その後、CLPモデルマウスにおけるHRG処置後の免疫血栓形成過程の観察やRNAi HRG ノックダウンマウスにおける免疫血栓形成を観察する。それに伴って血管内皮上に発現する炎症関連分子の動態を観察する。さらに予定にあるように肺血管イメージング法に挑戦する。また、ROSとの関連性をさらに明らかにする為に免疫血栓が形成された組織の酸化度を計測する。
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