研究課題/領域番号 |
17K15582
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
細田 隆介 札幌医科大学, 医学部, 助教 (20749428)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | SIRT1 / オートファジー / マイトファジー / 筋ジストロフィー |
研究実績の概要 |
骨格筋特異的SIRT1KO(SIRT1 smKO)マウスと野生型(WT)マウスを用いてSIRT1が生体においてマイトファジーの調節を関るかどうかを検討した。48時間の絶食を行ったWTマウスとSIRT1 smKOマウスの骨格筋でウエスタンブロットを行ってオートファジーの誘導を比較検討したところ、SIRT1 smKOでは絶食によって誘導されるLC3-IIの増加が減少しておりオートファジー活性化が減弱されることが示された。この時SIRT smKOマウスでは絶食を行っていない場合でもLC3-II の増加が見られ、SIRT1がオートファゴソームとリソソームの融合段階に関わっている可能性が示唆された。定量PCRを用いた解析では、SIRT1 smKOマウスの骨格筋でオートファジー実行分子であるAtg5の発現が有意に減少していた。さらにマイトファジーの実行分子であるBCL2L13の発現も有意に減少していた。このことから、SIRT1が骨格筋のマイトファジー制御に関与していることが示された。 SIRT1のマイトファジー制御機構を明らかにするために、培養筋芽細胞(C2C12細胞)を用いた実験を行った。SIRT1をノックダウンしたC2C12細胞に、ミトコンドリアの脱共役剤であるCCCPの処置を行ってマイトファジーを誘導したところ、SIRTノックダウンC2C12細胞ではコントロールと比較してマイトファジーの指標となるリン酸化ユビキチンが増加していた。この時、SIRT1ノックダウンC2C12細胞ではオートファジーの実行分子であるLC3-IIがコントロール細胞より増加しているにも関わらず、ミトコンドリアタンパクはSIRT1ノックダウン細胞で多く残存していた。これらの所見から、SIRT1はマイトファジーの際、オートファゴソームで隔離された障害ミトコンドリアとリソソームの融合に関る可能性が示された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り平成29年度に、マウスと培養細胞モデルにおいてSIRT1がオートファジー活性化に関与することを明らかにできた。マイトファジー実行分子の活性化にSIRT1が関与していることを示すデータも得られている。また、Long-Range PCRをはじめとしたミトコンドリアの障害を検討する実験手法の確立にも成功しており、Duchenne型筋ジストロフィーモデルマウスであるmdxマウス骨格筋でのマイトファジー活性とSIRT1の関係を明らかにする体制が整っていることを踏まえて、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点までで本研究は順調に進行しており、今後も当初の予定通り研究を進める予定である。平成30年度は、実際にmdxマウス骨格筋でマイトファジーが減弱しているのか確認し、SIRT1活性化薬であるレスベラトロールやSIRT1720の処置でマイトファジー活性が回復して病態が改善するのか検討する予定である。 さらに、mdxマウスの骨格筋におけるマイトファジー不全にSIRT1がどのようなメカニズムで関与しているのかを明らかにするために、mdxマウスの骨格筋組織において、抗SIRT1抗体を用いたクロマチン免疫沈降-シーケンス法によりオートファジー実行因子とマイトファジー実行因子の遺伝子のプロモーター領域にSIRT1が結合するのか明らかにする。SIRT1の関与が明らかにできた場合は、SIRT1により脱アセチル化を受ける蛋白を免疫沈降法および蛋白質量分析法により網羅的に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)試薬の購入の際、メーカーが行っている割引やキャンペーンを効率的に利用したため。 (使用計画)次年度使用額については物品等の購入に使用する予定である。
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