これまで我々は、筋ジストロフィーに対する蛋白脱アセチル化酵素SIRT1による骨格筋保護メカニズムの解明を行い、SIRT1がオートファジー障害の回復、酸化ストレス軽減に関与することを見出した。さらに、我々はSIRT1により障害ミトコンドリアを除去して酸化ストレスを軽減する機構であるマイトファジーが活性化することを明らかとした。本研究の目的はSIRT1がマイトファジーを活性化するメカニズムや、筋ジストロフィーの骨格筋におけるマイトファジー障害とSIRT1の関与を明らかにすることで、SIRT1/マイトファジーを介した新規骨格筋治療法の開発を目指すことである。 平成29年度には、骨格筋特異的SIRT1ノックアウトマウスとC2C12筋芽細胞を用いた実験で、SIRT1がマイトファジーの実行に関与していることと、SIRT1がマイトファジーの際にオートファゴソームで隔離された障害ミトコンドリアとリソソームの融合に関与する可能性を見出した。 平成30年度には、mdxマウス骨格筋のミトコンドリアDNAをlong-range PCRを用いて解析した。mdxマウスの骨格筋においてミトコンドリアDNAに欠失をもつ障害ミトコンドリアが蓄積していることを明らかとし、mdxマウスの骨格筋ではマイトファジーを介したミトコンドリアのクリアランスが低下している可能性を示すことができた。 今後は、mdxマウスの骨格筋においてオートファジー実行分子の遺伝子発現がどのようにSIRT1に制御されているのか、SIRT1結合蛋白・脱アセチル化蛋白の網羅的解析を用いて明らかとする。また、mdxマウスの骨格筋で活性化しているオートファジー阻害シグナルであるmTORが、SIRT1でどのように制御されているのか詳細なメカニズムを明らかにする。引き続き本研究課題の実験を行い、これまでの研究とあわせて論文にまとめていく。
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