研究課題/領域番号 |
17K15588
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
住谷 瑛理子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (50724754)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨髄ストローマ細胞 / RANKL |
研究実績の概要 |
骨髄は哺乳類の造血の場であり、免疫細胞の供給源となる重要な組織である。 本研究は胎児期に開始する骨と骨髄の形成メカニズムを明らかにし、機能的な骨髄の構築に寄与する細胞集団を同定することを目的とする。特に骨髄中の血球細胞の維持に働く骨髄ストローマ細胞集団に着目し、その特徴や起源を明らかにすることを目指す。 これまでの研究において、マウス胎仔において骨髄腔の形成が始まる直前の軟骨膜中にRANKLを発現する間葉系細胞が検出されることを示し、この細胞をfOci (fetal osteoclast inducer)細胞と名付けた。fOci細胞を除去したマウスを作成したところ、骨髄中の血球の減少が見られることを明らかにした。また、成体マウスの骨髄ストローマ細胞にRANKL発現履歴があることがわかり、fOci細胞が発生の過程で骨髄ストローマ細胞に分化する可能性が示された。 平成30年度の研究ではfOci細胞の細胞運命を調べるために、RANKL発現細胞をドキシサイクリン非投与時特異的にラベルすることのできるマウス(RANKL-tTA;LC1;Rosa26-tdTomato)を作成した。このRANKLフェイトマッピングマウスにおいて胎仔期特異的にドキシサイクリン投与を休止することでfOci細胞を標識し、出生後の骨を解析した。その結果、出生直後の大腿骨では軟骨膜細胞、骨芽細胞、骨細胞、骨髄ストローマ細胞がtdTomatoを発現していた。このことからfOci細胞が生体内で複数系統の間葉系細胞に分化することのできる、未分化な細胞であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
fOci細胞の時期特異的な標識が可能なマウスを作出することができたことで、fOci細胞の細胞運命の解析が進み、fOci細胞が複数種類の間葉系細胞に分化することのできる細胞であることを明らかにすることができた。また、このマウスを利用して胎仔期のfOci細胞を標識したのちセルソーティングにより分取することが可能になり、次年度に計画しているfOci細胞の遺伝子発現解析に向けて順調に準備が進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
fOci細胞のRNA-seq解析を行い、遺伝子発現プロファイルを明らかにすることでfOci細胞に特徴的な遺伝子発現があるか否かを調べる。特にfOci細胞と成体の骨や骨髄を構成するRANKL陽性間葉系細胞(骨芽細胞や骨髄ストロマ細胞)の遺伝子発現プロファイルの比較を行うことでfOci細胞の性状を明らかにする。fOci細胞に特徴的な遺伝子発現がみつかったら、その遺伝子産物をfOci細胞のマーカー分子として利用することの妥当性を検証する。
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