研究課題
酸化ストレスや外来異物に対する応答系の破綻は様々な疾患発症と密接に関わっている。このような疾患を未然に防ぐ目的で、細胞は環境ストレスに対して素早い応答で対応し、恒常性を維持している。ストレスセンサーKeap1 は転写因子Nrf2 のユビキチン化反応を制御し、酸化ストレス防御機構の中心的役割を担う鍵因子である。申請者らの研究成果からKeap1-Nrf2 システムは多様なストレス刺激に応答してユビキチン化反応を制御することが明らかになった。しかし、詳細な分子メカニズムは未だ不明である。本申請研究は、ストレス応答におけるNrf2 活性化の分子基盤、およびKeap1 の活性酸素種センサーの同定と生理機能解明を目的とした。平成29年度は、Keap1-Cul3 がどのようにNrf2 ユビキチン化するのか明らかにするために構造解析を行った。Keap1 全長およびCul3N末領域の共結晶をいくつか得ることに成功した。現在、X線回析及びさらなる条件検討を行い、構造解析を進めている。また、Keap1KOマウス由来のMEF細胞へ各種のKeap1変異体を発現させ解析を行なった結果、Keap1C末端が重要であることがわかった。さらに、このC末端領域を欠失したKeap1ノックインマウスをゲノム編集技術を用いて作製することに成功した。このマウス由来のMEF細胞を樹立し、過酸化水素に対する応答を調べたところ、過酸化水素処理によるNrf2活性化が減弱化した。今後、この解析を継続し、Keap1の酸化ストレスセンサーの同定と生理機能を明らかにする。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、Keap1-Cul3の共結晶の作成に成功し、また、過酸化水素の感知に必要な領域を欠失したKeap1を発現するマウスの作製に成功した。
Keap1-Cul3の共結晶のX線回析を行う。また、Keap1C末端領域を欠失したマウスを用いて、酸化ストレス応答における個体レベルの解析を進める。
H29年度に予定していた実験について、計画よりも試薬などに必要な経費を低く抑えることができたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、平成30年度の助成金と合わせてKeap1ノックインマウス解析費として使用する計画である。
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