平成30年度は、これまでに作製した過酸化水素センサー欠失Keap1変異体ノックインマウスを用いて、チオレドキシン還元酵素阻害剤オーラノフィンに対する応答を検証した。Nrf2活性のモニタリングには、OKD48マウスを用いた。OKD48マウスは、Keap1によるユビキチン化に重要なNrf2のN末領域にLuciferaseを連結したタンパク質を発現するトランスジェニックマウスで、Keap1の不活化すなわちNrf2の活性化をモニタリングすることが可能である。過酸化水素センサー欠失Keap1変異体ノックインマウスとOKD48マウスを交配し、その複合マウスを用いてIn Vivoイメージング解析を行った。その結果、Keap1野生型OKD48マウスは、オーラノフィン投与により有意な発光が観察されたが、過酸化水素センサー欠失Keap1変異体OKD48マウスでは、オーラノフィンによる発行の誘導が減弱化した。以上の結果より、マウス個体レベルにおいてもオーラノフィンによるNrf2活性化にはKeap1の過酸化水素センサーが重要であることが証明された。今後、この成果を論文発表を行う。 また、Keap1-Cul3がどのようにNrf2ユビキチン化するのか明らかにするために、結晶構造解析・クライオ電子顕微鏡法による構造解析を進めた。結晶構造解析については、8オングストロームまでの解像度の構造情報を得ることができた。現在、結晶の質の向上を目指して条件検討を行っている。クライオ電子顕微鏡法においては、Keap1-Cul3複合体の撮影に成功し、現在分散性の改善を目指して条件検討を行っている。
|