研究実績の概要 |
肺胞上皮における細胞老化を検出するため、Keap1Flox/Flox(以下Keap1 F/F)マウスにCreリコンビナーゼ発現アデノウイルス (Adeno-Cre) を経鼻的に投与して、肺胞上皮細胞特異的にKeap1遺伝子を欠損させてNRF2を恒常的に活性化させたが、野生型マウスと比較して、肺胞上皮特異的にNRF2を活性化させたマウスにおいて、目立った細胞老化の上昇は観察されていない。引き続き、検討を行う。 また肺胞上皮特異的にKeap1を欠損させたマウスにブレオマイシンを投与して、肺傷害を与えたものの短期間では発がんが観察されていない。この実験系においては、発がんに至るまでに極端に時間がかかるものと考えられるので、Adeno-Cre接種によりがん遺伝子KRASG12Dの発現を誘導して肺がんを発症させるマウスモデル (LSL-KRASG12D)とCdkn2a-/-, Keap1F/F, Keap1F/F:Cdkn2a-/-, 野生型のマウス4種類との複合変異マウスを作製し、これらのマウスにおいて発がん実験を行う。高いdoseのもとでの発がん実験では、明確な差が見いだされなかったので、現在接種するウイルスの量を減らして、長期観察を行っている。KEAP1/Krasの二重変異マウスにおいてさらにCdkn2aを欠損させると肺がんが多く形成されるか、がんの悪性化が観察される事が予想される。 さらに細胞レベルで恒常的なNRF2活性化による細胞老化誘導の一般性の検証を行うため、Keap1欠損マウスと野生型マウスからマウス繊維芽細胞を樹立できたので、今後の実験に利用する予定である。
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