研究実績の概要 |
(LSL-KRASG12D)とCdkn2a-/-(KCマウス), Keap1F/F(KKマウス), Keap1F/F:Cdkn2a-/-(KCKマウス), 野生型(Kマウス)のマウス4種類との複合変異マウスを作製し、これらのマウスにおいて発がん実験を行なった所、腫瘍面積はKCKマウスがKKやKCマウスより大きい傾向が観察された。しかし、腫瘍形成後のサンプルで、細胞老化をSA-beta-galactosidase染色による老化細胞を遺伝子型ごとに比較したが、Keap1の欠損によって老化細胞が増加していることはなかった。また、老化細胞が増加していると仮定するとそれを駆除するための免疫細胞群が変化していると考えられたので、肺がんに浸潤している免疫細胞のプロファイルを比較するために、肺がん凍結切片で免疫染色を行い、T細胞やミエロイド系の細胞の浸潤を比較したが、大きな変化はなかった。我々が仮定している恒常的なNRF2の活性化が細胞老化を誘導する機構は、腫瘍が形成される初期段階もしくはそれ以前で作用している可能性が導かれた。そこで,野生型やKea1欠損型のマウス繊維芽細胞(MEF)をマウス胎児より取得し、細胞増殖および老化細胞の度合いを比較した所、Keap1欠損MEFは野生型と比較して、増殖が早くなるが、同時に老化が早めにおこる傾向が観察された。以上の実験結果より、このような老化誘導はがん細胞では観察されなかったことから、我々の仮説であるNRF2の恒常的な活性化がもたらす細胞老化誘導機構は発がん以前の細胞で起こると考えられ、がん細胞成立後は機能しないと考えられた。今後はさらに、Cdkn2aを含めた他の因子がどのようにNRF2依存性がんの成立母地となるかを詳細に検討する必要がある。
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