研究課題
本研究では、Wnt/PCP経路が平面内極性化をもたらす分子機構を解明することを目的としている。そのため本年度では、PCP分子の一つDapleノックアウトマウスの組織において、平面内細胞極性の異常を検証した。マウス組織における平面内細胞極性を見るために、脳室壁表面にシート状に並ぶ上衣細胞を組織ごと免疫染色し、共焦点レーザー顕微鏡で細胞表層部の微小管の配向を撮影した。野生型では微小管が細胞内で非対称的に配向していたが、Dapleノックアウトマウスでは微小管の平面内極性が見られなかった。さらに野生型マウスの脳室にDaple shRNAを導入したところ、周囲の野生型細胞が正常な平面内極性を示しているにもかかわらず、Dapleノックダウン細胞だけが微小管の平面内極性を失っていた。このことから、脳室内の脳脊髄液の流れる向きや他のPCP分子とは独立して、Dapleが微小管の平面内l極性化を制御することがわかった。これらの結果をまとめ、国際科学誌Cell Reportsに論文を発表した。また、Dapleノックアウトマウスの脳室壁組織から電子顕微鏡試料を作成し、微小管の平面内での配向と細胞膜や基底小体との接続を観察試みたが、透過型電験用の超薄切片では微小管の全長を捉えることができなかった。さらに収束イオンビームFIB-SEMにて基底小体周辺部分を連続で切って撮影したが、微小管は不明瞭で3D画像化までできなかった。しかし、共同研究によって超高圧電子顕微鏡による微小管の解析を進めることができた。
2: おおむね順調に進展している
当年度はDapleノックアウトマウスの表現型を論文にし、DapleをPCP分子だとして、先立って報告することができた。後発の当該分野の論文にすでに引用されている。
Dapleが微小管の平面内細胞極性を制御する分子機構を解析するため、脳室壁組織をDaple抗体で免疫沈降したサンプルをMS解析行う。平面内極性化した組織にてDaple結合タンパク質をスクリーニングし、微小管関連タンパク質を検索する。
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PLoS Biology
巻: 16 ページ: e2005090
10.1371/journal.pbio.2005090.
Cell Reports
巻: 20 ページ: 960-972
10.1016/j.celrep.2017.06.089.