研究課題/領域番号 |
17K15598
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
川崎 拓実 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (60584414)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自然免疫 / マクロファージ / 抗原提示 |
研究実績の概要 |
細胞障害性T細胞(キラーT細胞)は、抗原特異的なT細胞受容体を発現しており、抗原を提示した細胞を認識すると、細胞内に蓄積した物質を放出することで細胞死を誘導する。この細胞障害性T細胞は、ウイルス感染した細胞を排除することによる感染防御や、自己抗原を発現する細胞を除去することによる自己免疫疾患の予防に役立っていることが知られている。抗原特異的な細胞障害性T細胞の誘導には、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞が外から取り込んだ抗原を分解しMHCクラスI分子にのせ、細胞外に提示するクロスプレゼンテーションにより誘導される。ところがマクロファージは、脾臓以外の肝臓、小腸、皮膚、肺などのそれぞれの組織に存在し、多種多様な役割を果たしているが、どのマクロファージがクロスプレゼンテーション能をどのような状況で発揮するのかについての解析が全く進んでいない。そこで肺に存在する抗原提示細胞の肺胞マクロファージによるクロスプレゼンテーションの理解により、将来の腫瘍免疫治療の応用を目指している。 これまでの研究で、ex vivoにおいて肺胞マクロファージがクロスプレゼンテーション能をもっていることを明らかにした。また、肺に存在する免疫細胞のうち、もっとも効率よく抗原を取り込む能力が高いことが明らかとなった。また、個体における分子メカニズムを明にするため、肺胞マクロファージの責任遺伝子CSF2変異マウスの導入、コントロールとしてCD103樹状細胞の責任遺伝子Batf2の変異マウスの導入を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究活動において、腫瘍免疫増強に向けたクロスプレゼンテーションの基礎的な実験データを取得することができた。現在、野生型マウスを用いて抗腫瘍増強効果があるかを検討するため、癌肺転移モデルを用いて検証を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
肺胞マクロファージの分化は、成長因子の一つGM-CSFが必須であることが知られている。つまり、GM-CSFの遺伝子Csf2ノックアウトマウスは、肺胞マクロファージが存在しない。そこで、肺胞マクロファージ欠損(Csf2ノックアウト)マウスを用いて、OVA鼻腔内投与実験を行う。現在CSF2の変異マウスを導入したことから、ヘテロマウスを掛け合わせ順次ノックアウトマウスを作製している。十分なマウスの匹数が確保できれば、すみやかにクロスプレゼンテーションが肺特異的に誘導されるか検討する。また、CD103陽性樹状細胞がクロスプレゼンテーションを担っていることを明らかにするため、同様に責任遺伝子であるbatf3ノックアウト変異マウスを導入した。ヘテロマウスより十分なノックアウトマウスが作製され次第OVA鼻腔内投与実験を行う。また、これらノックアウトマウスを用いて肺癌転移実験を行う。
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