細胞障害性T細胞(キラーT細胞)は、抗原特異的なT細胞受容体を発現しており、抗原を提示した細胞を認識すると、細胞内に蓄積した物質を放出することで細胞死を誘導する。この細胞障害性T細胞の働きにより、ウイルス感染した細胞を排除することによる感染防御や、自己抗原を発現する細胞を除去することによる自己免疫疾患の予防、癌の排除に役立っていることが知られている。抗原特異的な細胞障害性T細胞の誘導には、樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞が細胞外から取り込んだ抗原を分解しMHCクラスI分子にのせ、キラーT細胞に提示するクロスプレゼンテーションにより誘導されることがしられている。特に近年、脾臓やリンパ節以外の肝臓、小腸、皮膚、肺などのそれぞれの末梢組織では、キラーT細胞が病原体感染などにより組織特異的に増加し、特に組織常在性キラーT細胞として維持されることが報告されているが、どのような抗原提示細胞が組織常在性キラーT細胞へのクロスプレゼンテーションを担っているのかが不明である。そこで本研究では、肺に着目し、肺組織中のどの細胞がクロスプレゼンテーションを担っているかを明らかにすることを試みた。肺のマクロファージを特異的に死滅させるため、クロドロネイトリポソームをOVA免疫マウスに投与後、肺にOVAを感作すると、OVA特異的キラーT細胞の割合が減少した。クロドロネイトリポソーム処置後のマウスの肺の免疫細胞の分布を調べると、肺胞マクロファージが特異的に減少していたことから、肺胞マクロファージのクロスプレゼンテーションにより、肺組織内でのOVA特異的キラーT細胞の増加に貢献していることが明らかとなった。
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