研究課題
神経細胞における微小管モータータンパク質による物質輸送システムは、大脳皮質形成や軸索輸送などに重要な役割を果たしており、これが破綻すると、滑脳症などの中枢神経系の形成不全や神経変性疾患を引き起こす。我々はこれまでにNudCが、キネシンおよび細胞質ダイニンの重要な制御因子であることを明らかにしてきた。本研究課題では、NudCが発生期および成熟期の神経組織においてどのような役割を果たしているかを、NudCコンディショナルノックアウト(CKO)マウスを用いて明らかにする。NudC CKOマウスをtau プロモーター制御下でCreリコンビナーゼを過剰発現するトランスジェニックマウスと交配し、得られた胎生期ニューロン特異的NudC 欠損マウス胎児の大脳皮質を組織学的に観察した。その結果、脳室帯と脳室下帯における前駆細胞増殖は正常であるものの、皮質板が薄く中間層の距離も短くなることが明らかとなった。またこの現象は主に胎生期(E)14-15日に顕著に認められ、E16以降は野生型との差が減少し皮質層構造も形成された。このことから、NudC欠損が増殖・分化した神経前駆細胞の放射状移動を遅らせ遊走距離が短くなることで一時的に大脳皮質を薄くさせていることが明らかになった。次に、NudC CKOマウスから調整した後根神経節(DRG)ニューロンをin vitroでNudCを欠損させ軸索輸送を観察した。その結果、NudC欠損DRGニューロンでは順行性および逆行性輸送の速度が低下し、この現象はNudCの強制発現でレスキューされた。このことから、NudCがキネシン・ダイニンの制御を介して成熟ニューロンの軸索輸送システムを調節することが明らかとなった。以上の結果から、NudCは胎生期から成熟期の神経細胞において微小管モータータンパク質のはたらきを正常に維持するための重要な制御因子であることが示唆された。
すべて 2018
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Scientific reports
巻: 8; 1 ページ: 8019
10.1038/s41598-018-25979-4