安全な再生医療の実現には、ES細胞およびiPS 細胞が共通に有する分化多能性・自己増殖性という特筆すべき性質を、分子レベルで正確に理解することは極めて重要であると考える。私が所属する研究室では、以前にMYC のパートナー因子であるMaxを欠失させたES細胞がアポトーシスを示し、この表現型はNanogの強制発現によって抑圧される事を報告した。しかしながら、なぜMaxを欠失させたES細胞がアポトーシスを示すメカニズムは全く解明されていなかった。そこで、私がMaxホモ欠失ES細胞が呈するアポトーシスの原因を探ることを目的に研究を進めてきた結果、MAX非結合型c-MYCがアポトーシスを誘導し、NANOG は、遊離c-MYCと結合する事で、アポトーシス誘導に対する抑制因子として機能している可能性が示唆された。 そこで、本申請では、(1)Max欠失ES細胞におけるアポトーシス誘導因子としての遊離c-MYC の機能解明と、(2)Maxホモ欠失ES細胞が呈する致死的な表現型を消失させる上でのNANOGの分子機能の解明という2つの研究項目を中心に研究を遂行している。 令和元年度は、アポトーシス誘導因子としての遊離c-MYC の機能解明の為に次の2つの実験計画を立案施工した。 1 強発現Mbd3によって維持されたMax欠損ES細胞の発現解析 2 ChIPシーケンスによるMAX非結合型c-MYCタンパク質のゲノムへの結合部位についての網羅的な解析
|