研究課題/領域番号 |
17K15605
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
浅賀 正充 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (60572865)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Nucleostemin / Oct4 / ES細胞 |
研究実績の概要 |
NucleosteminはES細胞を含む各種組織幹細胞や多くのがん細胞に発現している、核小体タンパク質である。申請者らはこれまでに、ドキシサイクリン依存的にNucleosteminの発現を消失させることができるES細胞(NSKO ES細胞)を樹立し、Nucleosteminの消失によりES細胞の多分化能が維持できず分化してしまうことを明らかにした。さらに、Nucleostemin欠損による分化は、本来ES細胞の分化とは異なり、栄養外胚葉へ分化する。しかし、Nucleostemin欠損ES細胞では、栄養外胚葉分化を阻害する転写因子であるOct4が高いレベルで発現していることから、Nucleostemin欠損ES細胞ではOct4のDNA結合能が低下しているのではないかと仮定し、研究を行った。 今までの期間に、申請者は、Nucleostemin欠損ES細胞を用いたChIP-seq解析を行った結果、Nucleostemin欠損によってOct4が本来結合するコンセンサス配列に結合できなくなる事を明らかにした。また、Oct4のパートナー因子の1つであるSox2の過剰発現ではOct4のDNA結合能の低下をレスキューできないことから、Oct4のDNA結合能の低下はSox2の発現量の低下ではないことが明らかとなった。さらに、Nucleostemin欠損により、Oct4のSUMO化が減少することを明らかにした。Oct4のSUMO化はDNA結合能や転写活性化に重要であるという報告もあることから、今後Oct4のSUMO化とDNA結合能についてSUMO化できないOct4変異体を作成して解析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ChIP-seqの系を立ち上げ、研究計画に記載したNSKO ES細胞でOct4のChIP-seqを行うことができた。その結果、Oct4のDNA結合能の低下が網羅的に解析することができた。また、Oct4のDNA結合能の低下はNucleostemin欠損によるSox2の発現量の低下による可能性が考えられたが、申請者らの解析から、Sox2の低下が原因ではないことが明らかとなった。 さらに申請者らは、Nucleosteminがテロメア関連タンパク質のSUMO化を制御すること、Oct4のSUMO化がDNA結合に重要であるという2つの知見から、NucleosteminがOctのSUMO化によりDNA結合能を制御する可能性を考えた。そこで、Flag-SUMO1を発現するNSKO ES細胞を樹立しOct4のSUMO化を検討した。その結果、Oct4のSumo化がNucleostemin欠損により減少していることが示唆された。これらの解析は研究計画に記載していない内容ではあるが、Oct4のDNA結合能の低下メカニズムを解明する一助となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの解析からNucleostemin欠損によるOct4のDNA結合能の低下が網羅的解析から示された。さらにOct4のSumo化によるDNA結合能の可能性が示唆される。そこで、平成30年度には、Nucleostemin欠損によるOct4のSUMO化の低下が、これまで報告されている部位と同様であるかSUMO化できない変異体Oct4を作成して検討を行う予定である。さらに、作成した変異体Oct4と野生型Oct4のChIP-seq解析により、Oct4のSUMO化とDNA結合能の関連について詳細に解析を進める予定である。さらに、研究計画に記載したNucleostemin に結合する核小体タンパク質によるOct4のDNA結合能の制御の可能性も考え、LC/MSによる探索も併せて行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究では、NSKO ES細胞を用いたChIP-seqを行ったが、想定の使用額より安い金額で実験が完了できたため、次年度使用額が生じた。今後、さらなる解析のため、次年度もChIP-seqを継続して行う予定である。また、研究計画では、免疫沈降やLC/MS解析を予定しているが、抗体購入やLC/MS関連試薬およびLM/MS委託料が高額になることが予想されるので、次年度に繰り越した助成金も使用して研究を継続する予定である。
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