NucleosteminはES細胞を含む各種組織幹細胞や多くのがん細胞に発現している、核小体タンパク質である。申請者らはこれまでに、ドキシサイクリン依存的にNucleosteminの発現を消失させることができるES細胞(NSKO ES細胞)を樹立し、Nucleosteminの消失によりES細胞の多分化能が維持できず分化してしまうことを明らかにした。さらに、Nucleostemin欠損による分化は、本来ES細胞の分化とは異なり、栄養外胚葉へ分化する。しかし、Nucleostemin欠損ES細胞では、栄養外胚葉分化を阻害する転写因子であるOct4が高いレベルで発現していることから、Nucleostemin欠損ES細胞ではOct4のDNA結合能が低下しているのではないかと仮定し、研究を行った。 これまでに、申請者はNucleostemin欠損ES細胞を用いたChIP-seq解析を行い、Nucleostemin欠損によってOct4が本来結合するコンセンサス配列に結合できなくなる事を明らかにした。また、Oct4のパートナー因子の1つであるSox2の過剰発現ではOct4のDNA結合能の低下をレスキューできないことから、Oct4のDNA結合能の低下はSox2の発現量の低下ではないことが明らかとなった。これまでの研究で、申請者らはNucleostemin欠損による栄養外胚葉分化が、転写因子であるNanogまたはEsrrbの過剰発現で一部レスキューできることを明らかにしている。そこで、NanogまたはEsrrbの過剰発現によりOct4のDNA結合能もレスキューできるのではないかと考えChIP-seq解析を行った。その結果、NanogまたはEsrrbの過剰発現で、Nucleostemin欠損によるOct4のDNA結合能がレスキューできた。
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