研究課題
本研究の目的は、申請者が発見した新規脳内糖化ステロール群に着目し、その代謝機構および生理機能を明らかにするための分析基盤を開発することである。申請者は最近、動物では1種類しか存在しないと考えられてきた糖化ステロールが、脳において一群を成して存在し、その中にはパーキンソン病モデル動物で発現量が変動している新奇物質も含まれることを明らかにした。また、糖化ステロール群の代謝をグルコシルセラミド分解酵素(GCase)が担う可能性が明らかになった。GCaseの機能不全は、パーキンソン病や小脳失調などの神経変性疾患の発症に関与する。本研究では、脳内糖化ステロール群に特化したターゲットリピドミクス解析系を開発し、糖化ステロール群の代謝機構および生理機能を解析することにより、糖化ステロール代謝が難治性神経変性疾患発症の新たな分子基盤となり得る可能性を検証する。平成30年度は、糖化ステロール群の合成機構の解析システムを開発した。糖化ステロ―ル群の合成活性測定方法として、糖のドナーとなるグルコシルセラミドなどの糖脂質とステロールを基質として用い、GCaseを酵素源としてin vitroで酵素反応を行い、酵素反応液から抽出した脂質を高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC/MS)で解析することを試みた。酵素反応液に添加したステロールが多量に残存していること、同じく酵素反応液に添加した界面活性剤が脂質抽出物に混入することなどが原因し、LC/MSで酵素反応液の脂質抽出物中の糖化ステロールのシグナルをとらえることが難しいことが判明した。そこで、薄層クロマトグラフィーを用いて酵素反応液の脂質抽出物からステロールならびに界面活性剤を除去し、糖化ステロールを精製したところ、LC/MSで糖化ステロールを検出することができるようになり、糖化ステロ―ル群の合成活性測定ができるようになった。
2: おおむね順調に進展している
平成30年度終了時点で、糖化ステロール群の合成機構の解析システムの開発が完了し、GCaseと糖化ステロール群の組織化学的局在解析システムの開発に着手していることから、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
平成31年度は、交付申請書に記載した研究実施計画に従って、引き続きGCaseと糖化ステロール群の組織化学的局在解析システムの開発を進める。
交付申請時に計上した予算内で、平成30年度までに完了を予定していた糖化ステロール群の合成機構の解析システムの開発を完了させることができたため、未使用分を次年度に使用することにした。交付申請書に記載した研究実施計画に従い、平成30年度未使用分および平成31年度請求の研究費を用いて、GCaseと糖化ステロール群の組織化学的局在解析システムの開発を進めていく
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