研究課題/領域番号 |
17K15611
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
国田 朱子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (50608768)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 胃癌 / EBウイルス / オルガノイド |
研究実績の概要 |
今年度ヒト胃癌臨床検体30例(EBウイルス関連胃癌2例)から正常部、腫瘍部よりオルガノイドを樹立した。胃正常部位由来オルガノイドは増殖能も良好で培養法は確立できたと考えられる。また凍結保存法も確立できた。さらに、組織採取当日だけでなく翌日まで保存した検体からオルガノイドを樹立が可能な保存法を確立した。一方腫瘍由来オルガノイドの維持は最適化を行っているがどの組織型のものでも樹立可能なプロトコルは確定できておらず更なる検討が必要である。胃癌より樹立したオルガノイドをヌードマウスの皮下へ移植することによりオルガノイド由来PDXを樹立し胃癌組織と形態を比較し他ところオルガノイド由来PDXは元の胃癌組織と似た形態をとる事が確認できた。正常胃オルガノイドを用いた解析ではEBウイルス感染実験及びピロリ菌の感染実験を行った。EBウイルス感染実験はウイルス液及びAkataシステムを用いた接触感染を試みたが十分な感染効率が得られておらず今後最適化を進める。CRISPR/Cas9システムによるゲノム編集を行うためオルガノイドへの遺伝子導入をエレクトロポレーションにより行い、GFP発現プラスミドが導入されるプロトコルを確立した。また、EBウイルス関連胃癌由来KT(SCIDマウス皮下腫瘍)より細胞株及びオルガノイド樹立を行い、樹立した細胞株及びオルガノイドをSCIDマウスの皮下へ移植した。さらにKTにエレクトロポレーションによる遺伝子導入実験を行い条件検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胃癌組織30例からオルガノイドを樹立する事ができた。腫瘍由来オルガノイドについては今後も培養条件の最適化が必要であるが正常組織由来オルガノイドの樹立法は確立できたと考える。また凍結保存や組織形態観察のためのパラフィンブロック作成やHE染色、免疫組織染色も順調に進めている。樹立した腫瘍由来オルガノイドのPDX作製については増殖能が低いものが多くまた凍結保存を優先して行っていたため十分な検討が進められていない。腫瘍由来オルガノイドの培養法を最適化し、PDXの作製を進める。オルガノイドへの遺伝子導入法として新たにエレクトロポレーションの手法を取り入れ、GFP発現プラスミドを用いて正常胃由来オルガノイドへの遺伝子導入が可能である事が確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍由来オルガノイドの培養条件の最適化に引き続き取り組む。胃癌各種組織型ごとに元の胃癌組織とオルガノイドの形態の比較や胃上皮マーカーの発現プロファイルを免疫組織染色により検討する。また、引き続き胃癌各種組織型ごとにオルガノイドのバンキングを行う。オルガノイドを用いたスクリーニング法の開発のため、96 wellプレートでのオルガノイド培養法の検討も行う。胃オルガノイドへのEBウイルス及びピロリ菌感染実験については、今後長期的に観察を続け形態変化、遺伝子発現変化、メチル化解析を行う。エレクトロポレーション法により今後ARID1Aなどの遺伝子変異導入を行ったオルガノイドにEBウイルスを感染させ、変異導入の有無により感染効率が変化するか検討する。またKTにエレクトロポレーションやレンチウイルスにより遺伝子導入を行う条件を検討したのちCRISPR/Cas9を用いてKTのEBウイルスゲノムをクローニングし配列決定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度、当該年度以上にオルガノイド作製に要する試薬、消耗品類、マウスが多く見込まれるため次年度に繰り越した。繰り越した使用額はオルガノイド作製に要する試薬、消耗品類、マウスの購入に充てる予定である。
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