研究課題
今年度ヒト胃癌臨床検体40例(EBウイルス関連胃癌1例)からオルガノイドを樹立した。また腫瘍部より樹立したオルガノイドをヌードマウスの皮下へ移植しオルガノイド由来PDXを樹立した。腫瘍由来オルガノイドの維持に適した培地の検討を行いある増殖因子の添加により増殖の亢進が認められた。今後さらなる培養条件の最適化を行う。オルガノイド培養時に微小区画が施されたプレートにまきこむ事により大きさが均一なオルガノイドを作製する事ができた。また樹立したオルガノイドへARID1Aのノックアウトを行うため、CRISPR/Cas9によるARID1AのgRNAのデザインを行った。胃がん細胞株にgRNA及びCas9タンパクを導入しクローニングを行いARID1Aがノックアウトされたクローンを得た。今後エレクトロポレーションにより正常胃オルガノイドへARID1Aノックアウトを行い特性解析を行う。一方EBウイルス関連胃癌由来PDXモデルであるKT(SCIDマウス皮下腫瘍)の凍結保存法の開発を進めた。凍結保存後の組織からSCIDマウスへ移植し生着することが確認できた。これまではKTの凍結保存ができなかった為マウスへの継代を20年以上繰り返し維持してきたが今後は必要な時に凍結保存した組織からKTを樹立する事で使用マウス数を減らす事が可能となる。またKTのゲノム解析として樹立時の背景及び腫瘍部、及び現在継代中のKTの全ゲノム解析を次世代シーケンサーにより行った。継代により数多くのSNPが蓄積されている事がわかった。今後さらに詳細な解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
前年度は胃癌組織30例からオルガノイドを樹立したが今年度は40例と前年度より多くのオルガノイドを樹立する事ができた。またオルガノイドの組織形態観察のためのパラフィンブロックの作製法の検討も進めた。通常のブロック作製法ではオルガノイドの構造が保持されずに適切に観察する事ができなかったがゲルの組成を検討しブロック作製を機械でなく手で行う事によりオルガノイドの構造が保持された標本を作製する事ができた。またARID1AノックアウトのためのCRISPR/Cas9システムの開発も成功し今後同様の方法で遺伝子変異導入が可能である見通しが立った。EBウイルス関連胃癌由来PDXモデルであるKTについては凍結保存法の開発に成功した。また詳細な解析はまだ進められていないがKTのゲノム解析も行う事ができた。
腫瘍由来オルガノイドの培養条件の最適化と胃癌各種組織型ごとのオルガノイドのバンキングを進める。EBウイルス関連胃癌オルガノイドは他の胃癌と培養に適した条件が異なると考えられる事からKTやEBウイルス関連胃癌細胞株から樹立したオルガノイドを用いて培養条件の検討を行う。胃オルガノイドへARID1AやPIK3CA, E-cadherinなどの遺伝子変異を導入し形態変化や遺伝子発現変化、DNAメチル化解析、増殖能、EBウイルス感染効率の検討を行う。またKTのin vitro培養法の最適化を行いCRISPR/Cas9を用いた遺伝子変異導入やEBウイルスゲノムのクローニングを行う。
次年度は最終年度であり当該年度以上にオルガノイド作製に要する試薬、消耗品類、マウス代が見込まれるが配分額が今年度より少ないため次年度に繰り越した。次年度使用額はオルガノイド作製に要する試薬、消耗品類、マウスの購入に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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