本研究では胃オルガノイドの安定した樹立法の確立とオルガノイドへの遺伝子導入やEBウイルス感染実験を実施した。また胃癌手術検体から正常胃およびEBウイルス関連胃癌を含む胃癌オルガノイドの樹立を行なった。まず胃オルガノイドの樹立に関しては、培地の改良を重ねオルガノイド樹立の成功率がほぼ100%になる方法を確立した。一方で胃癌オルガノイドの樹立に関しては樹立の成功率が76.3%と改良の余地があり今後も最適化に引き続き取り組む。またオルガノイドの保存法も確立し、凍結保存後のオルガノイドについてもほぼ100%に近い生存率を達成することができた。樹立したオルガノイドの症例数は2019年度は33例で研究期間全体を通じて104例より胃癌オルガノイドの樹立を行なった。樹立した胃癌オルガノイドの中で増殖率の高い検体についてはヌードマウスの皮下にオルガノイドを移植しPDXの樹立を行なった。樹立したPDXの組織像が手術検体の組織と類似した形態を保持している事が確認できin vivo胃癌モデルとして適切であることが証明された。今後薬剤スクリーニングのためにオルガノイドを用いる際には細胞レベルのみならずin vivoの検証にも用いることが可能となり胃癌の薬効評価に用いていきたい。胃オルガノイドを用いた検討としてはEBウイルス感染実験やいくつかの遺伝子導入を行なった。EBウイルス感染実験は組み換えEBウイルス液を培地中に添加する実験やマイクロインジェクション法による導入を試みたがEBウイルス遺伝子の発現確認ができず感染成立が得られなかった。今後引き続き条件検討を重ね感染成立を目指したい。他方遺伝子導入についてはエレクトロポレーション法及びレンチウイルスによる導入で50%程度の導入が確認でき、今後引き続き遺伝子導入やゲノム編集を行いEBV関連胃癌の発癌・進展に関与する遺伝子の同定を行っていく。
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