研究課題/領域番号 |
17K15613
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
本田 真也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (90532672)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オートファジー / がん |
研究実績の概要 |
中心体数の制御は染色体を均等に分配する上で最も重要なことである。多くのがん細胞の特徴の1つに、過剰な中心体の存在がある。中心体が過剰に存在すると、染色体の分離異常を促し、染色体の不安定性を介して発がんや腫瘍の悪性化が惹起される。中心体数の制御は主にユビキチン―プロテアソーム系により行われていることが知られているが、近年我々は新たに中心体数の制御にオートファジーが関与していることを明らかにした。本研究ではオートファジーによる中心体制御が、発がんや腫瘍の悪性化に関与しうるかについて解析を行っている。 オートファジーは中心体タンパク質Cep63を分解することで中心体数の制御を行っており、オートファジーの不全はCep63の異常な蓄積を引き起こし、結果として中心体数の増加につながる。しかしながら、オートファジー欠損細胞において継代を重ねても多中心体細胞の割合は一定数以上には増加しないこと・オートファジー不全マウスでは多中心体細胞の増加は認められるものの、がんの発生は認められなかったことから、オートファジー不全により生じた多中心体細胞はその後細胞死を起こしていることが考えられた。そこで、オートファジー欠損細胞に細胞死を抑制することで多中心体細胞数に変化が生じるかについて解析を行った。また、オートファジー不全による中心体数の増加が腫瘍の悪性化を引き起こすかについて、マウスへのXenograft移植実験を用い解析を行った。さらに、オートファジー不全による腫瘍形成への関与について、マウスを作製し解析中である。 今後はヒトがん細胞においても同様のオートファジー不全による中心体数制御の破綻ががんの発生・悪性化に関与しているかについても解析していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らはこれまでにユビキチン―プロテアソーム系に加え、オートファジーも中心体数制御に関与することを明らかにしている。しかしながら、オートファジー欠損細胞における多中心体細胞数の割合は、一定数以上には増加しなかったことから、多中心体細胞はその後細胞死を起こしていることが考えられた。そこで、オートファジー欠損細胞において、細胞死を抑制することで多中心体細胞数の変化の有無を解析したところ、細胞死の抑制は有意に多中心体細胞数を増加させることが明らかになった。さらに腫瘍化した細胞を用いた移植実験の結果から、オートファジーの不全は腫瘍の悪性化に関わっていることを明らかにした。現在、オートファジー不全の腫瘍形成への関与について、マウスを作製し解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在解析中のマウスを用いたオートファジー不全による腫瘍形成に関して、個体数を増やした解析、発生したがんにおける中心体数の解析などを行う。 またオートファジー不全による中心体数の増加が、ヒトがん細胞においても発がん・腫瘍の悪性化に関与しているかについて、当研究室で所持しているヒトがん細胞を用いて解析を行う。 さらに申請者らは本学所有の低分子化合物ライブラリーを用いたスクリーニングから、多中心体を有する細胞に細胞死を誘導する化合物を取得している。この化合物は多中心体細胞に対しては細胞死を誘導するものの、正常な細胞に対しては何の影響も与えないことを明らかにしている。この化合物を解析することで、がんの多中心体獲得メカニズムの解明を行い、マウスを用い抗がん剤としての有効性を検討する。
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