研究課題/領域番号 |
17K15614
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
内仲 彩子 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 助教 (40746921)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタボリックシンドローム / 免疫応答 / B細胞 / 慢性ストレス |
研究実績の概要 |
慢性炎症を基盤病態とするメタボリックシンドローム(MetS)のストレス応答におけるB細胞の役割については不明な点が多い。初年度においては、MetSの動物モデルDahlS.Z-Leprfa/Leprfa (DS/obese)ラットを用いて脂肪組織炎症および脾臓におけるB細胞サブセットの分布についてフローサイトメトリー解析を行い、またMetSの脂肪病態と免疫応答に及ぼす拘束ストレスとPTEN阻害薬投与の効果を検討した。 DS/obeseラットとその対照動物であるDahlS.Z-Lepr+/Lepr+ (DS/lean)ラットを8週齢で入手し、9週齢にDS/leanおよびDS/obeseラットをPTEN阻害薬(bisperoxovanadium-pic, 0.2 mg/kg, i.p.)投与群と非投与群に分け、さらにDS/obese ラットについては拘束ストレス(2時間/日、午前)負荷群と非負荷群に群分けした。11週齢に心形態・機能評価を行った後、臓器摘出を行い免疫学的および分子生物学的解析を実施した。 結果、PTEN阻害薬投与は、拘束ストレスを負荷したDS/obeseラットの収縮期血圧の上昇を抑制した。PTEN阻害薬はストレス下のDS/obeseラットにおいて、皮下脂肪の重量を減少させ、脂肪細胞肥大および炎症を抑制するとともに、内臓脂肪の炎症を抑制する傾向を示した。またPTEN阻害薬投与は皮下脂肪組織におけるM1マクロファージマーカー遺伝子発現の減少傾向を示した。フローサイトメトリー解析では、PTEN阻害薬はストレス負荷したDS/obeseラットの脾臓においてIL-10産生性Breg細胞の割合を有意に増加し、B-1細胞の増加傾向も示した。PTEN阻害薬はストレス負荷したラットにおいて脾臓の制御性T細胞(Treg)比率の増加と内臓脂肪におけるCD8+T細胞の低下も誘導した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載した初年度の研究計画に沿って初年度は免疫学的解析を中心とし、内臓脂肪組織および脾臓におけるBリンパ球サブセットおよびTリンパ球サブセットのフローサイトメトリーを用いた解析を実施した。Tリンパ球サブセットに関しては、当初の予定ではTh1/Th2細胞比やTh17細胞の解析も行う予定であったが、単離可能な細胞数の関係上、Breg細胞とも関連のある制御性T細胞、CD8陽性T細胞を中心にフローサイトメトリーにより分布を検討した。一方、Bリンパ球サブセットに関しては、申請書に記載したBreg細胞、B-1(B-1a,B-1b細胞)、B-2細胞すべての分布について解析を実施できた。M1、M2マクロファージに関しても各マーカー遺伝子の発現をRT-PCR法で検討を行った。免疫学的解析だけでなく、脂肪組織の炎症応答について病理学的解析や遺伝子発現の検討も実施することができ、脂肪病態と免疫応答に及ぼす拘束ストレスとPTEN阻害薬投与の短期(2週間)効果について解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、拘束ストレス負荷および PTEN 阻害剤投与を4週間実施し、長期における免疫応答に及ぼす拘束ストレスとPTEN阻害薬投与の効果およびMetS 病態や臓器障害への影響を多面的に解析していく。具体的には初年度も実施したフローサイトメトリーを用いたB細胞、T細胞サブセットの分布解析を行い、長期ストレス負荷、薬剤投与により分布がいかに変化するかの検討を行う。また代謝への影響、特に糖代謝および脂質代謝への効果について糖負荷試験、グルコース負荷試験、インスリンシグナル活性、生化学的解析、糖・脂質代謝関連遺伝子発現の検討を行う予定である。脂肪および脾臓組織だけでなく、心筋組織や肝組織傷害についても検討を行う。エコーおよび心カテーテルによる心機能解析を行うとともに、病理学的手法による酸化ストレスや炎症状態の検討を実施する。 また、30年度においては本研究テーマによる学会発表、昨年度から得られたデータをまとめ論文の作成・投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定した一般試薬およびReal-time解析試薬が少ない消費量で研究を実施できたため次年度使用額が14332円となった。30年度は申請書に記載した通りの設備および消耗品の購入に助成金を使用する予定である。また30年度はより多面的な解析を行っていく予定であることより、次年度使用額14332円について消耗品購入費のなかで抗体の購入費に使用する予定である。
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