研究課題/領域番号 |
17K15615
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
山川 大史 三重大学, 医学系研究科, 助教 (20631097)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 中間径フィラメント / Desmin / 細胞分裂 / 老化 / 筋肉 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに筋肉組織に特異的な中間径フィラメントであるDesminのリン酸化不全が、細胞分裂障害を誘導することを培養細胞レベルの実験で明らかにしてきた。Desminに先行して、間葉系組織に特異的な中間径フィラメントであるVimentinのリン酸化不全マウスにおいて、Vimentinの高発現部位の細胞分裂障害が若年期の白内障の発症や創傷治癒の遅延といった早老症をきたすという知見を得ている。本研究では、Desminのリン酸化不全マウス(DesminSA/SA)を新規に作製し、筋肉組織の細胞分裂障害の有無、またそれに伴う機能障害を調べることで、Desminリン酸化の生理的意義を明らかにすることを目的としている。 平成29年度はDesminSA/SAの作製と表現型の解析を実施し、体重減少、心臓や骨格筋などの線維化が若年期から出現するという筋組織特異的な表現型を明らかにした。また、DesminSA/SAマウスは脊椎湾曲や平滑筋の異常と思われる腎臓血管の拡張といった現象も見られることを明らかにした。一方で、これらの表現型の一部は既に報告されているDesmin欠損マウスの表現型と類似しているため、Desminの欠損とリン酸化不全間における病態が確立されるまでの過程の相違点を明らかにすることも課題の一つとなった。 平成30年度は、DesminSA/SAマウスのDesminタンパク質、mRNA発現量の解析から、DesminSA/SAマウスはDesminの発現が消失していることを明らかにした。ノックインマウス作製時に同時に挿入している薬剤耐性遺伝子のネオマイシンのアーチファクトでDesmin発現を消失させてしまっている可能性も考え、新たにノックインマウスのネオマイシンを除去したDesminSA/SA・Neo-マウスを作製し、成体8週齢の心臓、骨格筋の組織解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に報告のあるDesminノックアウトマウスの表現型から、DesminSA/SAマウスにおける心臓や骨格筋の線維化の原因の一つとしてDesminの発現量低下が一つの原因として考えられた。実際に成体8週齢のDesminSA/SAマウスではDesminのタンパク質発現量が低下していた。そのため、Desminの発現低下がいつ生じるかを確認した。成体の8週齢から遡り、4週齢、1週齢、胎児を解析し、胎児期のDesmin陽性細胞による心臓形成の段階からすでにDesminの発現が消失していることを明らかにした。DesminSA/SAマウスには薬剤耐性遺伝子ネオマイシンが挿入されており、これがアーチファクトとなり、Desminの発現を消失させている可能性が強く示唆されたため、CAG-Creマウスを導入し、DesminSA/SAマウスとの交配により、flox間のネオマイシン遺伝子を消失させ、DesminSA/SA・Neo-マウスを作製した。そこでまず成体8週齢の心臓、骨格筋の組織解析からDesminの発現量を確認した。予想通り、DesminSA/SA・Neo-マウスでは、筋肉組織におけるDesminのタンパク質量発現は維持されていた。DesminSA/SAマウスでは、Desminの発現量の低下が原因と考えられる筋肉組織の線維化の亢進が見られたが、DesminSA/SA・Neo-マウスでは同時期には変化がなかった。Desminのリン酸化不全は細胞レベルでは細胞分裂障害をきたすことから、筋肉繊維の形態や核の量の比較検討を行った。心筋、骨格筋ともに筋肉繊維の形態には異常は見られなかったが、骨格筋の筋繊維において核の形態と数に変化が見られた。そこで今後は骨格筋を主な研究対象として、再現性をとるとともに、筋繊維の機能異常に結びつくかを検討していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
Vimentin SA/SAマウスはDesminと同様にリン酸化不全で細胞分裂障害をきたし、成体の若年齢では表現型が乏しいが、加齢とともに白内障の早期出現や創傷治癒の遅延などの異常が観察されている。また、それに先立ちp16やp21などの細胞周期関連の老化マーカーの発現上昇が生じている。そのため、DesminSA/SA・Neo-マウスについても老化に伴う表現型の出現を確認する。また、表現型が出現する前段階として筋肉繊維の老化が生じているかを老化マーカー(p16、p19、p21、SA-βGal等)の発現上昇がみられるかを確認する。 培養細胞レベルでの遺伝子導入の系では分裂異常が生じているため、DesminSA/SA・Neo-マウス由来の筋肉細胞を培養の系で分裂異常が生じるか確認する。筋肉細胞の幹細胞である筋衛星細胞から筋肉繊維が形成されるまでの過程を経時的に組織学的に評価していくことで筋細胞の分裂異常の有無を明らかにする。 一方で、老化による表現型を観察するには時間がかかることから、同時進行にて、心筋傷害や骨格筋傷害マウスモデルを作製し、筋肉繊維の再生遅延等の変化が生じるかを評価していく。増殖マーカー(cyclinA、Ki67)の染色やEdU取り込み試験などによる免疫染色の評価とフローサイトメトリーによる評価を実施する。 また、前年度で得られた結果の信頼性を得るため、DesminSA/SA・Neo-マウスの筋肉組織における細胞分裂異常が生じているかを筋繊維の核の量と形態の比較検討を実施していく。以上の細胞レベルから個体レベルの解析を通して、Vimentinと同様にDesminについてもリン酸化不全による細胞分裂異常の有無とそれに伴う筋肉組織の機能異常を明らかにする。
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