研究課題
進行性骨化性線維異形成症 (FOP) は骨格筋内に出現する異所性骨を主徴とする希少遺伝性疾患である。原因はBMP受容体であるACVR1の一部が突然変異により変化して、BMPシグナルを過剰に伝えることにより異所性骨が形成されることがわかってきている。現時点ではFOP病態の進行過程の中に、骨化巣出現前に起こる線維性細胞の増殖機構に対する理解がまだ少ない。また、FOPの進行を止める有効な治療方法の開発への期待が高まっている。本研究では、①新たに作製したドキシサイクリン (Dox) 誘導条件下でACVR1の点突然変異分子hACVR1 (R206H) を発現するトランスジェニックマウス (FOPモデルマウス) を詳細に解析することにより、FOPの病態進行の初期過程を明らかにするとともに、②所属研究室で新たに同定されたFOP治療薬候補化合物の薬効評価を、FOPモデルマウスを使って行う。現在までに① FOPモデルマウスを用いて、アクチビンA、カルティオトキシン刺激による異所性骨化誘導条件の最適化が完了した。誘導開始から異所性骨が形成するまでに経時的にサンプル採取が完了し、病態進行初期のにおけるフレアアップの発生及び時間経過をほぼ確認できた。②FOP治療薬候補化合物の評価について、先行研究のin vitro病態再現系の解析で得られた治療薬候補化合物の治療効果を評価するため、最適化したFOPモデルマウスに治療薬候補化合物を投与し、異所性骨形成の阻害効果をマウス体内で検証した。5つの化合物の中、市販薬であるラパマイシンは強い異所性骨抑制効果を示した。ほかの2つ化合物は異所性骨の約50%を抑制した。さらに、FOP患者iPS細胞由来の間葉系間質細胞(FOP-iMSC)を用いて、この3つの化合物の作用メカニズムの一部を解明した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度計画の①FOP初期病態メカニズム解明のin vitro実験系の構築はやや遅れているが、 ②FOP治療候補化合物のin vivo評価は完了し、予定より早くメカニズム解明に進めていた。全体的には順調に進展している。
予定通り① FOP患者iPS細胞由来間葉系間質細胞(FOP-iMSC)、及び変異を修復した遺伝的背景が同一の対照細胞(resFOP-iMSC)を用いて、増殖速度を指標としたin vitro評価実験系を構築する。構築した実験系に、BMPとその下流のシグナル分子、及び炎症性サイトカインなどの刺激を加え、FOP-iMSCの増殖を促進する分子を解明し、FOP病態進行との関係を明らかにする。また、FOPモデルマウスから得た経時組織サンプルを用いて、免疫染色など解析方法より、線維性細胞増殖シグナルが異所性骨の形成に寄与しているかをin vivoで検証する。②引き続きin vitro病態再現系を用いて、FOP治療効果がある化合物の異所性骨抑制作用のメカニズムを解明する。違った作用機序を持つ場合、候補化合物の低濃度添加と相乗効果のある薬剤をin vitro病態再現系でスクリーニングにより得た上に、in vivoでFOPモデルマウスに対する治療効果を探る。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
The Journal of Clinical Investigation
巻: 127 ページ: 3339-3352
10.1172/JCI93521