研究実績の概要 |
卵巣癌を用いた先行研究でBETファミリータンパクの一つであるBRD4によって癌幹細胞遺伝子発現に関わる三次元ゲノム構造 (プロモーター、エンハンサーの相互作用) が構築されている可能性が示唆された。平成29年度は、まず数種類の大腸癌細胞株を用いて、卵巣癌同様にBETファミリータンパクによって癌幹細胞遺伝子の発現が制御されているかどうかについて検討した。その結果、大腸癌細胞株においてもBETファミリータンパク阻害剤JQ1投与によって癌幹細胞遺伝子 (LGR5, BMI-1, LRIG1, KLF5) の発現が低下することがわかった。さらに、JQ1投与により大腸癌細胞株の増殖が抑制され、大腸癌においてもBETファミリータンパク阻害剤が癌幹細胞を標的とした治療薬としてのポテンシャルを有することが示唆された。次に私たちは、パブリックデータベースに登録されているエンハンサーマーカー (H3K27ac, H3K4me1) の情報解析の結果から、癌幹細胞遺伝子の一つであるKLF5遺伝子の周辺にエンハンサー領域が存在する可能性が高いことを見いだした。そこで、KLF5遺伝子周辺で構築されている三次元ゲノム構造の解析を行うこととした。三次元ゲノム構造解析には特定のゲノム領域に結合するDNA、RNA、タンパク質を網羅的に同定することができるenChIP (engineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation) 法を用いた。KLF5遺伝子のプロモーター領域に結合するゲノム領域を網羅的に解析した結果、いくつかのエンハンサー候補領域を同定することができた。
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