研究課題/領域番号 |
17K15620
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉山 晶子 広島大学, 病院(医), 研究員 (30788469)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペリオスチン / 線維化 / 肝星細胞 / 細胞外マトリックス / インテグリン |
研究実績の概要 |
ペリオスチンは細胞外マトリックス蛋白として組織の構造維持に寄与する一方、組織修復や線維症において重要な役割を担っていることが解明されつつある。申請者らは肝臓においてペリオスチンが肝線維化を促進することを報告した。本研究の目的は、ペリオスチンが肝線維化を促進する機序を解明し、治療戦略を提示することである。 (1)ペリオスチンアンチセンス核酸による肝線維化治療効果の評価 肝線維化抑制効果を評価するため、急性肝障害モデル(四塩化炭素(CCl4)単回投与)および、病態の異なる慢性肝障害 (薬剤性; CCl4, thioacetamide (TAA), 非アルコール性脂肪肝炎(NASH); コリン欠乏高脂肪飼料(CDAHFD)) モデルを作製し、同時にペリオスチンアンチセンス核酸の投与を行った。急性肝障害モデルにおいてアンチセンスオリゴ投与群では、ペリオスチンの発現抑制に伴い、線維化マーカーであるαSMA、collagenの発現が有意に低下した。慢性肝障害モデルにおける線維化抑制効果ついては評価中である。また興味深いことに、NASHモデルにおいてアンチセンス核酸投与群で肝への脂肪蓄積の抑制が認められたことから、線維化だけでなく脂肪化においてもペリオスチンの関与が示唆された。 (2)ペリオスチンによる肝星細胞の活性化機序の解明 肝星細胞は肝障害により活性化され、筋繊維芽細胞へと分化し線維性コラーゲンを産生することで肝線維化において中心的な役割を担っている細胞である。これまでの実験で外因性のペリオスチン刺激は肝星細胞を活性化することを示した。ペリオスチン受容体として機能するインテグリンの同定を行うため、肝星細胞におけるインテグリンサブユニットの発現を解析するとともに阻害による活性化への影響を評価した。また、ペリオスチンの認識部位の同定を行うため、ペリオスチンドメインのクローニングを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一つ目の目標である、ペリオスチンアンチセンス核酸による肝線維化治療効果の評価に関し、急性肝障害および、病態の異なる慢性肝障害モデルを作製し、ペリオスチンアンチセンス核酸の投与が完了した。現在解析を行なっており、研究進行計画を上回るペースで進行している。 二つ目の目標である、ペリオスチンによる肝星細胞の活性化機序の解明に関しては、関与するインテグリンの同定と同時にペリオスチン認識部位の同定を計画している。現在、ペリオスチンの各ドメインに対するクローニングが終了したが、研究進行計画より僅かながら遅れている。タンパク精製が完了次第接着阻害試験を行う予定である。 以上のことから、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ペリオスチンアンチセンス核酸による肝線維化・脂肪化治療効果の評価 線維化抑制効果については、昨年度までに作製した慢性肝障害モデルの解析を引き続き行う。またNASHモデルにおいてアンチセンス核酸投与群で脂質蓄積の抑制が認められたことから、脂質代謝における評価も併せて行う。 (2)インテグリンにおけるペリオスチン認識部位の同定 クローニングしたペリオスチンの各ドメイン、フラグメントに対するインテグリンの結合を、肝星細胞株を用いた接着阻害試験により評価し、認識部位の同定を行う。
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