研究実績の概要 |
ペリオスチンは肝線維化を促進する。本研究はその機序を解明し、線維化治療の新たな戦略を提示することを目的とした。これまでに、1) ペリオスチンは慢性肝障害モデルマウスにおいて発現が亢進する, 2) ペリオスチン欠損マウスでは肝線維化が軽減する, 3) ペリオスチンは肝線維化において中心的な役割を担う肝星細胞を活性化させる, 4)その活性化、線維化には肝星細胞表面の細胞接着分子インテグリンαvβ5 , αvβ3が関与している, 5) 急性肝障害モデルマウス (薬剤性:CCl4投与) においてペリオスチンアンチセンス核酸は線維化関連遺伝子の発現を抑制することを明らかにした。 本年度は、非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) に対するペリオスチンアンチセンス核酸の効果を評価した。コリン欠乏高脂肪飼料 (CDAHFD) を与えたマウスにペリオスチンアンチセンス核酸を投与すると、CDAHFDにより肝臓で上昇したペリオスチンの発現が有意に低下した。それに伴い、線維化マーカーであるαSMAとCollagen1a1の有意な発現低下と、肝組織での線維化面積の減少を認めたことから、NASHモデルマウスにおいてもペリオスチンアンチセンス核酸の抗線維化作用が示された。また興味深いことに、ペリオスチンアンチセンス核酸投与群は非投与群に比べ、肝組織での中性脂肪蓄積量の有意な減少が認められた。また脂肪酸のβ酸化を制御するPPARαと関連遺伝子であるCpt1a, Acox, Mcadの有意な発現上昇と脂肪酸分解産物であるβ-ヒドロキシ酪酸の血中増加を認めたことより、この脂肪蓄積の抑制効果は脂肪酸の分解促進に起因する可能性が示唆された。以上より、ペリオスチンの制御は肝線維化の新たな治療戦略となりうることが示された。しかし、ペリオスチンと脂肪酸代謝の関係についての詳細は不明であり、今後さらなる解明が必要である。
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