研究課題/領域番号 |
17K15627
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
岩渕 千里 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (20514441)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | HIF-1a / 肺癌 |
研究実績の概要 |
日本人の癌の部位別死亡順位で、肺癌は男性で1位、女性では大腸癌に次く2位であり、その制圧は医学における重要課題の一つである。EGFR 陽性非小細胞肺癌 (NSCLC) ではゲフィチニブ等の分子標的薬による治療が効果を上げているが、これらの治療では再発例に対しての治療は困難である。癌が再発する過程では、残存する癌幹細胞と薬剤耐性獲得が問題となり、効果的な肺癌の治療を目指すためには、これらの機構を解明してそれを標的とする必要がある。本研究では、これらの機構のkey分子を探し、薬剤耐性獲得機構の解明、さらに癌幹細胞への効果的な治療法の開発を目指すことを目的とした。 本年度では、ゲフィチニブにより新たなHIF-1aの分解経路の解析を進めた結果、ゲフィチニブによるオートファジーの亢進によりHIF-1aが分解されることを明らかにした。ゲフィチニブ処理によりオートファジー関連分子のLAMP2A、LC3の発現が上昇すること、オートファジー阻害剤と同時処理することによりHIF-1aの分解が抑制されることを明らかにした。また、オートファジーに関与していることが報告されているPTENを欠損している細胞株ではゲフィチニブによるHIF-1aの分解は起こらず、オートファジー関連分子のLAMP2A、LC3の発現上昇も見られなかった。これよりPTEN依存的なオートファジーによりHIF-1aが分解されることが示唆された。 また、ヌードマウスを用いた細胞移植実験により、HIF-1a高発現細胞株では野生型の細胞株よりも高い腫瘍形成能を示すことが明らかになった。さらに得られた腫瘍を組織染色した結果、HIF-1a高発現細胞株では筋層への浸潤が多く見られた。これよりHIF-1a高発現細胞株では転移能も上昇していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年の1月に所属研究室の移転作業があり、移転準備および再開作業に伴い2ヵ月間完全に実験を停止した。加えて、移転作業により複数の機械での不具合が生じ、思うような実験再開が難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度では、細胞でのジーンチップ解析と並行して腫瘍組織でのジーンチップ解析を行い、腫瘍形成能、転移能に関する因子がHIF-1aの転写活性の有無によってどのように変化しているのかを捉える。細胞レベルでの実験からマウスを用いた実験へと移行し、ゲフィチニブ投与と同時投与することでより高い抗腫瘍効果を示す薬剤を探す予定である。また、ここまでのデータをまとめ論文作成および学会発表へも力を入れる予定である。 ゲフィチニブによるHIF-1aの分解経路については早々にまとめ論文作成を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室の移転に伴い、実験停止期間が2ヶ月間あり、その後移転に伴う複数の機器の不具合より思うような実験再開が出来なかったため。
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