本研究課題では、転写因子HIF-1aに着目し、肺がんにおける薬剤耐性獲得機構にHIF-1aがどの様に影響を与えるのか、また癌幹細胞の維持機構においてHIF-1aが与える影響を調べる事を目的とし研究を行ってきた。これまでの結果より、HIF-1aが高発現する事で薬剤耐性を獲得するには抗アポトーシス分子であるMCL1やBcl-XLの発現をmRNAレベルから上昇させタンパク質レベルでも高い発現を維持させることによりアポトーシスを抑制していることが示唆された。最終年度では、ゲフィチニブによる新たなHIF-1aの分解機構の解析については、ゲフィチニブにより誘導されるオートファジー(CMA)によるものであることが示唆された。ゲフィチニブによりCMAのkey分子LAMP2aの発現が上昇し、HIF-1aと結合していることも確認できた。さらにLAMP2aをノックダウンするとHIF-1aの分解が抑えられることも確認できた。また、HGF刺激をするとゲフィチニブによるHIF-1aの分解が見られないことから、HGFとCMAの関係について調べた結果、PTENを欠損させた細胞株ではCMAのkey分子LAMP2aの発現が低くCMAの誘導が起きにくくなっていることが示唆された。CMAとPTENの発現量の関係性については今後も研究を継続していく予定である。 また、ヌードマウスを用いた動物実験では、ヌードマウスへ肺がん細胞を移植しゲフィチニブの単剤投与群とゲフィチニブとHIF-1a阻害剤(YC-1)の併用投与群での再発実験を行なった。 ゲフィチニブ単独投与を3週間行うと、腫瘍の再増殖が観察された。単剤投与群ではそのまま再増殖が見られたが、YC-1との併用投与では、有意な腫瘍の再増殖遅延が見られた。YC-1は投与回数も少ないが効果的であることが示唆された。
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