研究課題
EGFRは肺腺癌の最も有名なoncogeneであるが、その分解経路に着目した研究は限られている。研究代表者はこれまでに肺腺癌の発生・悪性化因子としてstratifin(SFN)を見出し、肺腺癌特異SFN結合因子の1つとして、EGFRを含む受容体型チロシンキナーゼ(RTKs)の脱ユビキチン化酵素であるUSP8(Ubiquitin Specific Peptidase 8)を同定した。本研究ではSFNによるUSP8を介したRTKsタンパク質の脱ユビキチン化及び分解抑制の分子機序を明らかにし、SFNおよびUSP8の肺腺癌治療標的としての適合性を検証した。始めに肺腺癌組織196例を用いてSFNとUSP8の免疫染色を行い、SFNとUSP8はともに正常肺に比較して肺腺癌組織において有意に高発現していたが、SFN発現のみが組織型、病理学的病期、患者予後と負に相関していた。次に、SFNとUSP8を各々in vitroで発現抑制すると、ユビキチン化RTKsタンパク質が増加し、後期エンドソームへの蓄積が増加した。さらに、SFN結合部位に変異を挿入した変異体USP8では、RTKsのユビキチン化は促進され、USP8を介したSFNのRTKs脱ユビキチン化作用に両者の特異的結合が必須であることが示唆された。これらの結果から、「正常肺ではRTKsタンパク質がユビキチン化を受けて分解されるが、肺腺癌細胞ではSFNがUSP8の活性を亢進させてRTKsのユビキチン化をキャンセルするため正常な分解がなされていない」ということが明らかになった。SFNを標的とした癌細胞のみでRTKsの脱ユビキチン化を抑制する副作用の少ない新規治療薬の開発に繋げられる可能性が示された。
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Oncogene
巻: 37 (40) ページ: 5387-5402
10.1038/s41388-018-0342-9