研究実績の概要 |
1.臨床検体を用いた尿路上皮癌免疫微小環境の網羅的解析 上部尿路上皮癌271症例から組織マイクロアレイを作成し、免疫微小環境に関連する以下のマーカーの免疫組織化学染色を行った。CD3, CD4, CD8, CD20, CD45RO, CD68, FOXP3, PD-L1, B7-H3。免疫染色標本をバーチャルスライドスキャナを用いてデジタルデータとして取り込み、各マーカーの陽性細胞の密度を画像解析ソフトを用いて定量的に測定し、生存解析を行った。複数のマーカーが患者の臨床病理学的特徴や予後と関連していることを見出した。
2.尿路上皮癌細胞株を用いた、化学療法抵抗性因子の探索 細胞外に分泌され癌微小環境を構成する因子が化学療法抵抗性に関与しているという仮説を立て、以下の実験を行った。複数の尿路上皮癌細胞株および間質細胞株の培養上清を採取し、他の細胞株に投与し、ゲムシタビンの効果に変化が見られるかどうかを調べた。細胞増殖はゲムシタビンを投与してから3日後および5日後にMTTアッセイを用いて評価した。ある2種の細胞株の培養上清を加えた時に、ゲムシタビンの効果が著明に減弱しており、これらの培養上清中に分泌される何らかの因子がゲムシタビン抵抗性に関与していることが示唆された。ゲムシタビン抵抗性を与えた培養上清とそのような効果がなかった培養上清計4サンプルにおける分泌因子の発現を抗体アレイによって網羅的に解析したところ、ゲムシタビン抵抗性を与えた培養上清中で特異的に分泌が亢進している因子を複数同定した。現在、それらの因子を投与することでゲムシタビン抵抗性が得られるかどうかの確認実験を進めている。
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